多武峰古りにし里の春の雪
盆地内では積もらぬが、周囲の青垣の山は真っ白である。
長谷寺を過ぎて隠国、吉隠(よなばり)の辺りに来ると田んぼも畑も真白。宇陀への入り口である西峠近くまでくると道路にも雪が残っていた。宇陀・榛原に入った途端十センチほど降った形跡がある。同じ奈良でもちょっとした山や峠でも気象条件がこれほど違うとは。
多武峰も真っ白。
昔、天武がこんな歌を藤原夫人宛に詠んでよこした。
わが里に大雪降れり大原の古りにし里に降らまくは後 万)巻2−103
藤原氏の里に住む夫人に、
「飛鳥の宮には雪が降ったよ。そちらの古い里はこれからだね」
それに対して、夫人は、
わが岡のおかみに言ひて落らしめし雪のくだけしそこに散りけむ 同巻2-104
「生憎ね。こちらの神に頼んで降った欠片がそちらに散ってしまったのでしょう」と軽く返したという。
「おおはら」は「小原」と書いて万葉文化館あたりをさすという。その辺りが、藤原氏の生誕地とされ、生母の墓もある。
今日みたい雪の日に詠んだのかな。
大和も伊勢も南北に長いので同じ県内でも雪の降りように差がありますね。
天武と夫人の歌のやり取り。
当意即妙、ユーユーモアがあっていいですね。
こちらは明け方に雪が積もったようである。
夜明け前にしばらく車のエンジンをかけ雪払い。
慎重に息子を最寄りの駅まで送り届ける。
家には戻らず幹線道路沿いの喫茶店でモーニング。
その後一日中映画館に籠って寒さ知らずの一日
雪花が舞っては散っていく一日であった。
幹線道路沿いというと、ココかな。今ずいぶん流行っているそうですね。
住んでるところはまず雪は積もらないのですが、帰りは吉隠から長谷にかけて怖くなるほどの雪でした。あっという間に積もるんですね。長い下り坂だから慎重に降りましたよ。
多武峰古りにし里の春の雪
「古りにし里」、まさか「降りにし里」の
誤変換では? と 古典音痴の小生は 早合点しそうだったのですが
天武さんの「わが里に 大雪降れり 大原の 古りにし里に
降らまくは後」からの本歌取りとは、いやぁ~!
多武峰と言えば談山神社、談山神社と言えば赤、
そして古い里の くすんだ褐色、
そこに雪の白、それも 桃色がかった白・・・・、
ゴッホの絵の様に 凄い彩色を感じる、好い句ですね。
余談ですが、近鉄の「てくてくまっぷ」は 優れものです。
使われていないなら 一度 お試しください。
http://www.kintetsu.co.jp/zigyou/teku2/
万葉というのは4,500首くらいしかありませんから、平安王朝の歌に比べれば数にも入らず、印象的な歌はどこかあたまの隅で残ってるものですよ。それにしても、何の飾りもテクもなく、素朴なのが万葉の好きなところかな。
この句に「色」を感じていただくとは夢にも思いませんでした。雪の白と灰色の空。そんなイメージだったんですが、俳句とは解釈によって世界が広がるものなんですね。
近鉄のマップは仰るとおり、よくできていますね。県内くまなく網羅されていて、日帰りハイクのオススメコースとして、印刷まで考えられた優れもの。よく参考にさせていただいてます。一度は、「つらつら椿」コースを歩きたいと思ってるのですが。