今年の句(前半)

自分なりにまあまあの出来と思うものを整理してみる。
今日は今年前半から。
なお、◎は俳句会特選句。

一月
御旅所の雑司ら囲む焚火かな
餅搗を終へし臼より湯気上る
子らのみな夜さり出払ふ大晦日
大鴟尾の朝日を返し淑気満つ
門あけて仕事始めの公舎かな
破魔弓を授ける巫女の上気せる
粕汁の甘口仕立子だくさん
すべり台すぐ飽きる子の着ぶくれて
焼藷の新聞重ねなほ熱し
やがて打つ鬼にも慈悲の御膳かな
四日目となれば四温のありがたき
二月
仕留しを口々にほめ薬喰◎
宮の守ガイドをしつつ落葉焚く
病む猫の寝息うかがふ余寒かな
砂かけの田人ら猛り御田植祭◎
春ごとのカメラたぢろぐ砂つぶて
砂舞へば舞ふほど吉の春祭
記者席も砂の洗礼事祭
砂つぶて雨に見立てて春祭
駐車場奥の区画の下萌ゆる
三月
山独活のかづらの舟に売られけり
長幼の序のありながら土筆生ゆ
須弥壇の昏きに浮かぶ寝釈迦かな
三丈の本尊黙す涅槃かな
四月
選挙カー引きもきらずに春闌くる
禅寺のときに賑はひ花供養
廃校の桜のしべの降り止まず
神木の森を老鶯ほしいまま
五月
落ちやうの落下傘めき桐の花
抜きん出て雑木見下ろし桐の花
桐の花落つるやすでに萎えゐたる
芍薬の玉のいただき滲み染む
尋めて来し長谷の牡丹の裏切らず
勧進縄わたす欅の若葉かな
砂防ダム埋もれて永し花茨
六月
一ト筆のかばかり著き蜷の道
かくばかり泥田の澄んで蜷の道
撫牛の親子腹這ふ日の盛り
明易や三列シートの夜行バス
終生を近つ飛鳥の蝸牛かな

“今年の句(前半)” への6件の返信

  1. 選者になった気分です。

    一月
    子らのみな夜さり出払ふ大晦日
    二月
    砂かけの田人ら猛り御田植祭
    三月
    山独活のかづらの舟に売られけり
    四月
    廃校の桜のしべの降り止まず
    五月
    勧進縄わたす欅の若葉かな
    六月
    終生を近つ飛鳥の蝸牛かな
    以上6句がお気に入りです。

    ちなみに昨日愛読の新聞でも年間最優秀作が発表されました。
    最優秀句は男性でした。
        乱心のかけらのごとく帰り花

    1. 選をありがとうございます。
      「近つ飛鳥」の句は主宰選からはもれましたが、自分としてはお気に入りの一つです。選んで下すってありがとう。

      年間最優秀の句はおそらく私の属する結社では通らないでしょうね。というのは「帰り花」の傍題に「狂ひ花」がある通り「乱心のかけら」という措辞自体が季語と重なるものがあるからです。かように選者によって解釈が違うものなので、結社、師を選ぶのは大変重要なことになります。要は好きな句を詠むひとを師と考えればいいんですが。

  2. こういう風にまとめて整理しておくといいですね。ずらり並ぶと壮観ですね。いかに写生を重視しておられるかがよく分かります。

    三茶撰 
     砂つぶて雨に見立てて春祭
     長幼の序のありながら土筆生ゆ
     桐の花落つるやすでに萎えゐたる

    1. 選をありがとうございます。
      実際に見聞したものを、その印象の褪せないうちにメモするように心がけています。ですから、どうしても兼題句は苦手です。
      写生したものをいかに自分を殺して詠むのか、これもおおきな課題です。

  3. 今年もこの季節がやってまいりましたね。一年の速さが身に沁みます。
    南天撰

    やがて打つ鬼にも慈悲の御膳かな
    廃校の桜のしべの降り止まず
    勧進縄わたす欅の若葉かな

    1. 選をありがとうございます。
      学校はもう休みに入って、いつも家の前を通る集団登校の声も聞かれなくなって静かなものです。で、そろそろ大掃除の時期ですがこの寒さに腰が引けています。

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