行きずりの橋に見下ろす植田かな
ここ数日、東山中を行き来している。
若葉も幾分落ち着いてきて、青葉に移り変わろうとしている山里はいくら走っても走り飽きることはない。
ことに美しいのが、田の風景である。田植えが終わって間もない田は水を満々とたたえ、その田に若葉青葉、そして青空が映り込む風景はこよなく美しいし、いかにも日本的な原風景に巡り会えるような気がする。
それに比べて、国ン中は雨期に入るまでは乾ききっている。だから、このさわやかな空気に満ちている僅かな期間を惜しむように東山中、吉野へ分け入って心の清涼剤をいただくのだ。
都会の便利さに慣れたとはいえ本を正せば山国育ち。
無性に故郷の景色が恋しくなる時がある。
緑滴る山々をみると気持ちまで瑞々しくなるから不思議である。
啄木が岩手山を恋慕った気持ちがよくわかる。
ふるさとの山に向かひて言ふことなし
ふるさとの山はありがたきかな
ボチボチ矢頭山に会いたくなる頃である。
ぜひ。梅雨に入る前の、汗も心地いい時分に。
原風景に、コンクリートの橋、アスファルト舗装の道が横切ってはいても、元の姿を彷彿とさせる光景ならば問題ないでしょう。
帰れる処があることのありがたさ。