奈良三条通り

墨筆のワゴンセールや秋の暮

奈良は筆と墨の町だ。

正倉院展を見終わって、勤務時代の友人と猿沢の池からJR奈良駅まで真っ直ぐに伸びる三条通りを歩いていると、書道品店が3軒ほどあった。
店内にはさまざまな筆や墨、硯などが並べられているのは同じだが、そのうち1軒の店先には筆や墨などがワゴンに入れられて売られている。決して安いものではないのだろうが、日常書に親しんでいるわけでもないのに妙に懐かしくて手にとって眺めてみたくなった。が、夜の灯恋しさに前回も訪れた店に急ぐ方を優先してしまうのであった。

万葉旧跡

紀ノ川となりゆく水の秋の暮

どうしても吉野宮滝離宮があったという跡を見たくて車を走らせた。

台風の後とあって吉野川はささ濁りで水量も多いようだった。
時間がなかったので今日は名所・宮滝だけを見て返ろうと思っていたが、両岸が山に囲まれたこんな狭い場所に家も並んで宮といっても跡形もないだろうに思うのだった。かつてはこの上流に「柴橋」と呼ばれる木の橋が架かっていたそうだが、今では正面に鉄橋ができているので対岸にわたると、象(きさ)山と三船山の間を流れて吉野川に注ぐ「象の小川」がある。この渓流は水も澄んでいかにも秋の水といった風情である。
その奥にそば畑があるよという看板があったので狭い道を上ってゆくと、桜木神社、そしていよいよ吉野山へ通じる東海自然歩道登り口で車は通行止めになっていた。結局、そば畑もみつからないまま引き返すことにした。
吉野川沿いの国道169号、吉野神宮あたりの川幅が随分広くなってきたあたりでは夕日を入れた川面がまぶしいほどで、河原の芒の穂がきらきらと光るのだった。

愛車が泣いている

輪行の車窓の外の秋の暮

今日のような天気のいい日はとくにそうだ。

風もない自転車日和となると、調子に乗ってつい予定より遠くまで行ってしまう。
帰りの時間を計算すると、とんでもない時間になりそうで、最悪ハンガーノック(エネルギー不足)のため戻ってこれない可能性が頭をかすめる。
もともとそんなこともあろうかと、寝袋ならぬ輪行袋というのがあって、これに両輪をはずしてたたんだものをしまいこみ、電車やバスを利用するという手もある。
これを「輪行」というのだが、一般にこのようなトラブルを想定しているわけではなくて、プランにあらかじめ組み込んであるのが普通である。
当地でいうと、大和高田経由和歌山へ向かうJR和歌山線などでは、輪行袋をかついだ人たちを散見する。おそらく、紀ノ川沿いを走ろうという人たちであろうと思われる。十分時間をかけて色づきはじめた両岸の景色を楽しみ、帰路もおそらく輪行を予定しているに違いない。

当地へきて道路事情などを言い訳にしばらく走ってない。愛車にもうっすら埃がかぶっている。
すっかり足腰の弱った体にむち打って、再び飛鳥へのサイクリングカムバックを果たそうと室内用エアロバイクをはじめて三日。これを三ヶ月も続ければまた道路へ出られると思うが、その頃はまた底冷えの盆地で尻込みしなければいいがと思う。