むせぶ

脚立探しゐる薄暑の納戸かな

風が入らないところは暑い。

ついこの間春になったかと思っていたが、もうそんな季節になったのかと驚く。
ここ数日の気温はひと月先のもので、今夕の夕立がもたらした風が肌にも心地よいくらいだ。
FAXの調子がいまひとつ悪いので、電話線と共用するべく今日工事してもらったが、モデムを置いてある納戸に入るとむっとするような熱にむせむ。
暑さは家の中より始まるのだ。

ヨーグルトへ

ラベルほど粒の揃はぬ庭いちご

ぽつぽつとしか生らない。

夫婦ふたりにも足らない1個を刻んで朝食のヨーグルトへ。
明日あたり採れそうな粒が一個あって、これは珍しく虫に食われた跡はない。
去年飛鳥ルビーという苗を買って、夏にランナーを伸ばし孫苗の10株ほどを育てたものだが、同じ土を使っても葉ばかり成長するものもあって、手間を考えると結局スーパーで買ってきた方が早い。
食べ頃になると鳥に食われるとも言うが、みぃーちゃんが庭で見張ってるせいか今のところ実害はない。
明日も苺ヨーグルトかな。

減らない実

啄みて明日に熟し山桜桃

見ていて飽きない。

ヒヨが來て、椋鳥が來て、イソヒヨドリも単騎頑張ってくる。
隣地のゆすらうめが日ごとに熟してきて、色の濃い実を見つけては鳥が運んでゆく。
二、三年前までは老夫婦が來て摘んでいたものだが、今は息子さんが雑草刈にたまに来るくらいだ。
今年は椋鳥が大群で来るのを見ないので、実はしばらくの間楽しめるかもしれない。

嫌悪感わかず

紫の花に毛虫の好き好きや

根締めの紫蘭が満開だ。

よく見ると、花茎を這い上って花を食害する毛虫がいる、いる。
毛虫というと、葉や芽などを食害するのが普通だが、葉には目もくれないで珍しいものがいたものだ。
珍しい光景に不思議にも嫌悪感はわかず近づいてみると、黒地に深紅の横縞のあるカラフルな虫だった。

昇竜

神奈備の尾根這い上る椎若葉

龍田から三室山に向けての稜線がはっきり見える。

その稜線にしたがってこんもりと椎若葉が盛り上げているのだ。まるで龍が昇ってゆくようにも見える。
龍田古道の走るこの辺りは万葉に多く歌われ、歌碑もまた多い。
いつか歩かなきゃと思いつつそのままになっているが、新緑の今頃もまた気持ちがいいものにちがいない。

ころころしたやつ

根切虫鳥にやるべく放り投ぐ

出てくる、出てくる。

苗を植えようと畝を返していたら、ころころ太った白い幼虫が出てきた。
掘りあげるとまるまって可愛いものだが、悪さしても困るし、かといって踏みつぶすのも気が引けて、道路にぽいと投げ捨てる。
あわよくば鳥に食ってもらおうというわけだ。
後で確かめてみたが、首尾良く鳥がさらったか、うまく逃げおおせたか、姿はなかった。

もじゃもじゃ

対岸のひとつばたごのもやもやと

どういうわけか、香りがない。

ナンジャモンジャというのは強烈に甘い匂いを発するはずなのだが、今日見たのは鼻にかざしてもまったく匂いがしなかった。
それとも散りはじめるともう匂いはなくなるのか。
名前の通り、遠くから見ると木全体がもじゃもじゃしているように見えて、大陸から渡ってきたような趣のある木だ。