お渡り式の日

後背の山は枯れ果て新堂宇

ならまちを歩こうと市内まで。

興福寺境内に警察のバスが駐車しているし、三条通には屋台の数が普通でないので何かと思ったら、おん祭のお渡り式が終わったばかりだと知った。
おん祭のことは頭からすっぽり抜け落ちていたので、午後からのんびりと出かけたのだが、それが失敗だった。
お渡りの演武を終えた宝蔵院流の面々などが続々下ってくるので、御旅所もパスして浮見堂へ出、ならまちへ向かう。
最後はもう一度興福寺に戻ってきて新しく落成なった興福寺中金堂を見上げる。堂々とした五重塔がそばにあるせいか意外に小さく感じた。鴟尾も風鐸も当然ながら金ぴかである。
目を転じると、若草山には夕日がさして、枯れ山が見事な金色に染まり、新金堂のまぶしさに負けてない。

天の階

西に日矢降りて飛鳥の片時雨

毎日のように葛城から二上にかけて日矢が降る。

厚い雲が葛城越えをするときよく見られるシーンだ。
いっぽう、東の方はと見れば多武峰あたりが時雨雲にすっぽり包まれている。
盆地における時雨とはたいてい片時雨で、東が降れば西は晴、西が時雨れば東は晴という具合いで、盆地全体が時雨ということはない。むしろ、そんな場合はもはや時雨ではなく、ただの「雨」なのであるが。

朽ちるに任せ

山茶花の誰もとがめず散りゆける
山茶花の錆もふくめて愛でにけり

もう一か月以上になる。

いつ通ってもこの道は山茶花が散り敷いている。
上を見れば、大きな木に純白の花を誇っているのもあれば、盛りを過ぎて茶に変色してもなお頑張って散らないでいるものもある。
これが山茶花の咲きようなんだと思う。
散っても掃く必要はなく、このまま朽ちるに任せておくがいい。

池の畔で

枯芒かたへ傾く風の道

絮もほとんど飛んだ芒が硬直した姿をさらしている。

池へ向かって風が通るらしく、みな池に傾いたままだ。枯れきっているので、少々の風くらいでは揺れる弾力性も失っているようだ。
やがて強い風が吹くと矢が折れたように朽ちていくのだろう。

家を守る

嚔してにはか鰥夫のおさんどん

今日で七日目。

三度三度飯を作り、掃除に洗濯、そして猫どもの三度の飯の世話もする。
洗濯物取り込みを忘れて夜露に濡らしてしまったり、一回だけ買い物ついでにラーメン屋に立ち寄ったが、我ながらがんばっている。
急に冷え込んできたせいか、二日目辺りで水洟がやたらでて鼻が痛くなったもののようやく治まってきたか。
明日は、ちょっと足りないものの買い物もしなければならない。
要領が悪いせいか、なかなかゆっくり散歩するということもままならないものだ。

ホームセンター

自動ドア開くたび寒きレジ当番

古いホームセンター。

所狭しと商品が並んで、レジが片身狭そうに入り口に並んでいる。
レジの列に並んでいると、客が出入りするたびに北風が侵入してきてその寒いことったら。
レジ担当の足もとには電気ヒーターが置いてあるが、どの程度役に立つかは分からない。
従業員教育ふくめてほかにも管理が行きとどいているとは思えない点が目立つ店だが、それでも上場会社の店である。いつまで存続することやら、と他人事ならず心配している。

法隆寺西円堂へ

斑鳩の堂宇みな寂び金鈴子

今日も寒かった。

斑鳩はときおり修学旅行生もくるが観光客はまばらである。
西の端っこの西円堂はもっと閑散としている。

法隆寺の東院西院を巡って裏手に回ると、法輪寺前には大きな栴檀の木。葉っぱもみな落ちて、栴檀の金色の実が鈴生りで、斑鳩の錆色とは好対照。
俳句も今日はちょっとさぶい。