崖っぷち

かがむれば木つ葉動きて蓑虫に
蓑虫の縫いしばかりの木つ葉かな
蓑虫の木つ葉からげて雑な蓑
蓑虫の木つ葉の蓑を引きずれる
蓑虫の引きずる旅の一張羅
蓑虫のなにも持たざる旅ごころ
蓑虫の織つたる蓑の木っ葉かな
桜葉の蓑を蓑虫まとひたる
陽石に蓑虫着くも飛鳥かな
陽石に蓑虫蓑をつけしまま
蓑虫に亀の歩みのありにけり
陽石にすがる蓑虫つまみけり
陽石の先に蓑虫戸惑へる

祝戸のマラ石に寄った。

名前の通り男根をかたどった石で、これも飛鳥の奇石遺跡のひとつ。
古老に聞けば、飛鳥川をはさんだ対岸の山が「ふんぐり」しているから「ふぐり山」だと手振り交えて教えてくれた。聞けばなるほど、寝そべってだらんと延びたふぐりのように見えなくもない。
「あの山には昔から陰石もあるちゅうんで、子供の頃ずいぶん探し回ったが結局見つからなんだ」
「庭石か何かにでも誰か持ち去ったに違いないということやった」
陽石はその昔直立していたらしいが、今では45度くらいに傾いている。
なるほどそのままだと感心していたら、先ほどまで葉っぱが落ちているとばかり思っていたのがかすかに動いているではないか。
顔を近づけてみると蓑虫だった。葉っぱを巻き付けた蓑というのはなかなか洒落ているが、そこから頭だけ出して、のろのろと先端に向かって登っているようである。どうやら糸に頼らず地上を散歩中のようである。

ちょっと抓んでみたら、すっと首をすくめてしまってなかなか顔を出してこない。団子虫より相当用心深そうだ。
石の先端部分に置いてみたら、しばらくしてようやく顔を出したが、断崖の縁に戸惑ったように今度は全く動きを止めてしまった。
何だか悪いことをしたような気がしたが、訪れる人も少なく無事に帰すべきところに帰すだろうと、そのまま立ち去ることにした。

“崖っぷち” への4件の返信

  1. 古老のお話には笑ってしまいました。
    飛鳥にはこのような類のものが多いのでしょうか?
    写真もそれらしくて面白いです。

    蓑虫も冬眠中のは見たことがありますが蠢いているのは珍しいですね。
    蓑虫、昔はしょっちゅう目にしたのに最近はあまり見かけません。
    この蓑虫、蚕のように自ら糸を吐くらしいですね。
    連れ合いが言うには子どもの頃、蓑虫を大量に取ってきて近所のおばあさんの所に持っていったそうです。
    きれいにはがすと裏側はビロードのようなソフトな感触でそれをパッチワークークのようにつなぎ合わせて財布を作ったというのです。
    結構丈夫なのだそうです。
    まさか、嘘でしょう!!と調べてみたらどうやら本当らしいです。
    蓑虫の皮細工品というのがあるらしいのです。
    おどろきもものきさんしょのき、嘘のような本当の話です。

    1. 蓑の細工のことは聞いたことがあります。
      あれは、意外に丈夫で縦に裂かないかぎりまずは破れません。

      形が崩れない葉っぱを羽織ってましたので、これから木に登ろうという若い蓑虫だったのかもしれませんね。
      飛鳥は奇石文化に富んでます。石舞台を筆頭に、亀石、猿石、鬼の雪隠、鬼の俎、酒船石などなど。どれもみんな謎なのが興味引きます。

  2. 蓑虫さんならひょうきんで愛嬌がありますが、これが毛虫ときたら壮絶そのもの。

    我が家の玄関には、ジュンべリーなるシンボルツリーがあります。
    先日、この木の上の部分、すなわち木全体の半分程の葉っぱが、一夜にしてきれいに食べ尽くされてしまいました。赤茶けた糞がそれこそ茶色の砂と見紛うほどに、あたり一面に落ちています。最初は花壇の土が散水で流れ出たのかなあくらいの反応が小生。

    後に、見上げた家内が上部のすってんてんを発見。
    事後処理をしたとのこと。

    なんともはや立場の無い一日でした。

    1. 椿などが一晩でやられるチャドクガみたいなむしなんでしょうか。枝にびっしりついて気持ち悪さというのはありません。
      薬剤を噴霧すれば死にますが、始末するのも大変。焼くのがいいんですけどね、今どきは焚き火すらできません。
      帽子、マスクに長袖、軍手、本格武装で臨むのであります。奥さんは偉い!

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