聞く耳

侘助の庭の垣根の縄傷む

茶室の入り口脇に八畳ほどの広さの前庭がある。

四つ目垣が張り巡らされ、しっとりとした苔の庭に侘助が小さな花を下向きに咲かせている。
柴折戸も竹を組んだだけの簡素なもので外界と隔てる意匠はなく、しかも立て付けがゆるりというかゆったりとやや傾き加減の趣がなんとも心地よい。
苔には鳥が落としていったものが芽生えたと思える小さな万両が早くも実をつけていて、緑のなかの紅のアクセントが効いている。これも意図したものなのかどうか分からぬが、見事な意趣である。

ここ、吉城園は県の所有であるが、近々民間のディベロッパーに売り渡され高級旅館に生まれ変わるという。
東大寺敷地に隣接して一帯の緑の一画をなしていて、大仏殿とちょっと離れただけなのにうって変わって閑静なところが魅力なのだが、反対する声を無視して県は強行突破の姿勢を崩さない。
県立高校の統合問題も住民からひろく意見を聞くことなく、一方的に方針を決めては断行するらしい。
宿の少なさ、公立学校の冷房化率では全国ワースト、あいかわらず時代遅れのお上主導によるイベント行政。
県政の貧弱さは近畿六県のなかでも際だっているといえよう。

“聞く耳” への2件の返信

  1. 貴重な文化遺産ともいえるべき茶室が利益優先の民間に譲渡されるのは残念ですね。
    行政のやり方は各県ごとに大きな差があります。
    市民の声は届かないのでしょうか・・・

    今日は珍しく二度寝をしたために大きく予定が崩れた。
    いつもは余裕たっぷりなのに時間刻みの行動を強いられる。
    これから夕食の準備をして又次の予定が入っている。
    「早起きは三文の徳」を実感する一日であった。

    1. 県政は血の通わぬA政権と似たようなものです。ところが県民性とくれば、それが特に問題とも思ってないところがあって、政治とは民が育てるものということを逆説的に証明しているようなものです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください