おそまきの秋

傷つきし柚子のえくぼを愛しけり
柚子の香をあばたもともに愛しけり
棘とあばたとそれも愛してゆず香かな

まだ棘が残っていた。

枝がまだ若くて伸び盛りの頃、棘もまた成長中のものは柔らかいので見つけては伐っていたのであるが。
今日あたり、色もすっかり整っていい時分だからと手を伸ばすと、その固く成熟した棘の残党にうっかり触れてしまったのだ。
而して、痛みの代償としていくばくかの果実を得たのであるが、今年は数が少ない分一個の大きさも形も花柚子としては上出来のようである。
皮が痛んだものは風呂、殘りはジャムになるだろう。
柚子湯は冬,柚子単独では秋の季語だが、色形ともに美しいのは今ごろである。
林檎、洋梨、そして珍しい冬の梨と、各地からの到来ものに囲まれてデザートのゆたかな今こそわが家の最高の秋なのである。

“おそまきの秋” への2件の返信

  1. 豊かな食卓ですね。
    今頃のリンゴは蜜入りで美味しいですね。
    蜜柑もお風呂上りなどは何個でも食べたくなります。
    秋と冬が入り混じって私も季語の区別がつきません。
    こんな時は歳時記の出番です。

    今日の投句コンサートも師走のベストコレクションと題して
    チャイコフスキー 四季より11月のトロイカと12月のクリスマス
    ピアソラ ブエノスアイレスの四季より冬
    ヴィヴァルディ 四季より冬
    その他「たき火」や「ペチカ」などが演奏されました。

    1. 投句コンサートとは面白い趣向ですね。音楽だけをたよりに句を詠むなんてなかなかできない芸当です。さぞ、いい句が詠めたことでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください