奈良女子大のメタセコイヤ

母の日や故地なる町を彷徨へり

昨日母の日は俳句会の奈良吟行であった。

そのスタート地点として、母の生まれ育った奈良・北町の一角・西包永町(にしかねながちょう)としたかったので今回は単独吟行だ。

母の日やメタセコイヤの奈良高女

女子大正門とメタセコイヤ
近鉄奈良駅を降りたら、まず奈良女子大に向かう。かつての奈良女子高等師範学校で、母はここに進学したかったのだが新しい義母と折り合いが悪く諦めざるを得なかったことを死ぬまで悔やんでいた。その正門前にしばらく佇み、20メートルほどはあろうかというメタセコイヤの新緑を仰ぎ見ながら、母の思いはいかばかりだったかに思いをはせるのだった。

大学正門をぬけるとそのまま北へ、佐保川辺りに出て右に目をやるとそこは転害門を真正面に見る道に出る。平城京一条に相当する道である。そのあたりが西包永町で、その名は母が亡くなる2月ほど前の夏に病床でメモに書いて渡してくれたのだった。涼しくなったら連れて行ってあげると約束していたのが、9月中旬から容態が悪化してそれも永遠に叶わないこととなってしまったのが心残りでならなかったのである。

母の日や妣の通ひける石の橋

佐保小学校に通学していたと聞いていたので、それには西包永町の西端あたりで佐保川を越える通学路だったはずで、それらしき石橋の竣工年月を確かめると昭和6年6月とあった。母は大正13年生まれなのでちょうど小学校1,2年生の頃のことで、以来母はこの法蓮橋を毎日渡って通学していたことになる。渡ってすぐ右には聖武天皇陵入り口があるためだろうか、橋の造りは今なおがっしりしとしていてその石橋の上に立って振り返ってみると、転害門のさらに向こうには新緑に覆われた若草山がはっきりと見えるのだった。
法蓮橋より転害門を

今日13日は母の月命日である。

“奈良女子大のメタセコイヤ” への8件の返信

  1. 亡きお母様を偲んで思い出の地を辿られたのですね。
    「母の日」の最高の供養になったことでしょう。
    彷徨えり・・・とても素直な良い句だと思いました。

    「母の日」今更何をプレゼントしていいか迷った挙句、絵ハガキに歌を書いて病床に送りました。

       母こそはこの世に光灯さなん命の限り生きてあらまし

    1. 素晴らしいプレゼントですね。ひるがえって貧しい我が家ではプレゼントの習慣とてなく、18歳の時から家を出たきりでもあるし、盆暮れの贈答しかしてきませんでした。今になればああしてやれば、こうしてやればと思うことばかりです。

  2.   目には見えなくても、きっとお母様もほだかさんと並んで一緒に歩かれたことと思います。 いい親孝行をしましたねえ。(いい供養でもあります。)
     このように折に触れ思い出して、言葉や立ち居振る舞い、好物などをあれこれ考えていると生死もあまり関係なくなってきたりして・・・

    1. 何度か「もう一度見に行きたい」と母がもらしていた場所なので、もしかしたら一緒に歩いていたのかもしれません。喜んでくれてたら嬉しいのですが。
      たしかに胸の中にあるうちは生死は関係ないかも。時間がたてばたつだけ思い出が浄化されてゆくというのか。。。。

  3. おばあちゃん喜んでいるのが想像されます。
    画像がありますが、山が近く落ち着いた、何か懐かしい雰囲気を感じました。
    今とはだいぶ景観も変わっているとは思いますが、ここを歩いて。。と思うといやいや、載せて頂いてありがとうございますʕ •́؈•̀ ₎

    1. 橋の竣工年月を大きく撮ったので町の様子がもう少し写っていればよかったかも。この橋から向こう200メートルくらいの道の両側が西包永町です。住んでいた家は路地の奥だったと言ってたから、それらしいところは数カ所しかありません。どの路地だったのかな、と思いながら歩きました。

  4. いい母の日でしたね。思い出してあげることこそ親孝行でしょう。素晴らしいです。

    奈良女ですか、奈良駅前なんですね。そう言えば奈良の国立大学は奈良女と奈良学芸大二つでしたね。まともな学部を擁する国立大学がないので不思議だなあと思ってました。それだけ奈良女子大学の存在が大きかったのでしょうか。

    1. 近鉄奈良駅から5分足らずでしょうか。
      意外に奈良には大学が多くて、どれがどれやらよく分からないのですが、遺跡発掘とかは各大学で行われているようで、さすが古代遺跡が多い県ならではという感じです。
      母が望んだ奈良高女師範というのは当時から存在感をしめしているんでしょうね。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください