晩秋の響き

ばったんこ錆びたる音を打つばかり
ささくれて音のもれたる添水かな

まるで飛鳥の酒船石を模したようかのような石造物がある。

四つ五つを少しずつ傾斜をつけて組み合わせ、上から下へ水を流すしかけである。ここは何時行っても枯れていて何のために作ったのか首を傾げることが多いのであるが、三連休のあいだに訪れたときに水が流れているのを初めて見た。
この水は途中いろいろな変化をつけながら、曲水を描くようにやがて大池に流れ込んでいくのであるが、段差を大きくつけてある部分では山紅葉が覆っているのでせせらぎの音だけ聞こえてきて、これが五感すべてを癒やすように心地よい。
で、この酒仙石だが、近づくにつれ何だか様子が変だ。添水の仕組みを設えてあるのはちがいないが、周囲にひびきわたるような小気味いい音とはいかず鈍い音しか聞こえてこない。どうやら竹が古びてひび割れているのが原因だった。まさに竹刀で叩くような音そのものなのである。

明日はいよいよ立冬。晩秋を感じとるにはちょっとわびしい音であった。
馬見丘陵公園にて。

“晩秋の響き” への2件の返信

  1. 酒仙石、どんなものでしょう?想像してみました。
    ししおどしでもないし水琴窟でもない。
    ひょっとしてそうめん流しで使う竹を縦半分に割ったものに水を流す装置?
    もしもその竹がひび割れていたら水は漏れ音も濁るでしょうね。
    結構な距離があるのでしょうか?

    1. 酒仙石ではなく、酒船石の間違いでした。
      酒船石遺跡をご覧ください。
      どのような用途に使われたかは未だ解明されてませんが、大きな石に水を流すような溝が彫ってあるものです。

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