今年の句(後半)

今日は今年後半から。
なお、◎は俳句会特選句。

七月
方舟のバランスとりて蓴採る
行きずりのハイカーくぐる茅の輪かな
切麻の散らばりしまま御祓果つ
昂ぶりて誘いあはする夜振りかな
やり過ごすつもりの雷の長々と
雨の夜のかをりよどめる女王花
八月
手甲のままに摂待受けにけり◎
うつすらと実むらさきとはなりにけり
寄りあうて色づきあうて式部の実
さながらに白磁玉杯花芙蓉
白靴で豪華ヨットの客になる
走り根をまたぎ跨いで蟻の道
口上をさずけ盆礼遣はしぬ
九月
ひとむらの竹をよるべの秋蚊とも
水澄めりもはや木橋もなきあたり
露けしや閼伽井の小屋のかたぶきて
鰯雲末広ごりに覆ひくる
色浅きまま照り合うて椿の実
陵はねむり木の実を太らしむ
十月
靴脱いでやうやう気づく草じらみ
ことごとに言問ひ歩く千草路
紀の川となる水澄める吉野かな
水引の糸のもつるることなげに
十一月
橋脚のさまであらはに冬の川
大綿の柱なすともなく群れる
冬川原近道にして沈下橋
ばったんこ錆びたる音を打つばかり
十二月
白壁にさゆるる影の紅葉かな
枯蓮のかのもこのもの庭湖かな
山茶花の散りも散ったり紅の庭
投句箱据ゑて間遠の添水かな
胎内に入らば凩やさしけれ
尾根小屋の風に馴れにし氷柱かな
お渡りの仕丁焚火にゆるびけり
白足袋の隊士担げる野太刀かな
白足袋の隊士脇目もふりやらず
おん祭稚児よく的を射貫きけり
交名(こうみょう)の風にちぎられおん祭
槍術の錬士気を吐くおん祭
一の鳥居すぎて底冷つのりくる

“今年の句(後半)” への4件の返信

  1. こうして読ませていただくと寺社を巡り祭りを満喫し花鳥を愛でる奈良暮らしの様が伝わってきます。いい所でいい趣味を見つけましたね。句作にも一本筋が通っているところがいいと思います。

    三茶撰
     方舟のバランスとりて蓴採る
     口上をさずけ盆礼遣はしぬ
     水引の糸のもつるることなげに
     おん祭稚児よく的を射貫きけり

    1. 12月は京都で一生記憶に残る旅をご一緒しました。なかなかじっくりとはいかなかったですが、それなりの数も詠めたので大満足です。また先日の「おん祭」は厳しい寒さでしたが、アウトラインがつかめたので来年も行ければいいなと思っています。
      当地へはぜひ桜の頃にお出でください。吉野の春のスケールは一度は見る価値のあるものだと思いますよ。

  2. 句作にはその地域の四季折々が表れますね。特に歴史ある場所ほど昔からの行事が多くていいですね。

    南天撰

    口上をさずけ盆礼遣はしぬ
    山茶花の散りも散ったり紅の庭
    胎内に入らば凩やさしけれ

    来年も一日一句、楽しみにしています。

    1. 山茶花の句は大覚寺の庭で生まれました。椿と同じように山茶花も散り様を楽しむことをこの時初めて知りました。苦吟のうえ自分としては何とか言い得たかなと。

      来年もなんとか健康で毎日続けられるようにと願っています。

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