透けるかと紛ふ熟柿の濃赤錆
急に冷え込んできた。
斑鳩の里などを歩くと、木に成ったままで収穫されない柿が多く見られる。
鳥にも食われないのか、傷一つとない柿がまるまる熟れてもう溶けそうなくらいに色を濃くしている。しかも、向こうが見えるのではないかと思うほど透けるような色である。これを和菓子の水饅頭や水羊羹みたいだと言ったらオーバーか。
この深い赤色を何と呼べばいいのだろうか考えてみたが、なかなかいい名前が浮かばない。それこそ「熟柿色」なのである。
有田焼の柿右衛門の「柿」だって、その元は独特な赤の色合いが熟柿に近いところから取ったのではないだろうかと思えるほどだ。
今は、天理の辺りの「刀根早生」の東京、大阪方面への出荷がピークだそうである。これも渋柿だが炭酸ガスにくぐらせて渋を抜いてあると言う。先日、飛鳥の道端で買った柿の半分以上は渋柿だったので、あれはきっと手抜きして売っていたに違いない。
市内中川区の史跡散策路を歩いてきました。
青空にオレンジ色の鈴なりの柿が映えていました。
田舎の家にも昔次郎柿の木が一本ありました。
渋柿など今時誰も見向きもしないのかも知れません。
渋抜きの方法もアルコールとか色々あるようですが昔、母は竈(くど)に設えてある茶釜で渋を抜いていました。
田舎では子どものおやつでしたが中でも熟柿の美味しさは格別でした。
籾殻の中で熟成させた柿も美味しかったな~
貴重な子供時代の思い出ですね。
甘味が豊富な今、そのような素朴でいて忘れられない味の記憶に勝るものはあるのだろうかと思います。
ケのなかにハレがあるからこそ。美味に麻痺した舌にハレが訪れようがないのは寂しいものです。
日本の里山の秋を象徴する色と言えば柿の色だと思います。鈴なりになりますからね。スーパーで買う柿は専用の果樹園のもので一般の家にある柿は味も素朴なものなんでしょう。収穫するでもなく落ちるにまかせるまま。まあ仕方ないですかね。
庭のやせっぽちの柿は今年は外れかと思っていたら、一個だけ成っています。色づいて気づいたようなもので、たしかに家のものは店のようには甘くないです。
木の上で腐っていく柿も、鳥たちにはごちそう。やってくる色鳥を楽しみましょう。
先ほどから雀が賑やかで、朝寝していた猫たちも起きてきました。