15年の句から(後編)

それでは、続いて今年後半から。

逆縁の墓を洗うて父老いぬ
地に触れて破芭蕉とはなりにけり
外来種混じりて咲ける千種かな
富士の灰ここまで飛びし蕎麦の花
天平の甍あまねく月明り
金堂の御開扉さるる良夜かな
絵馬殿に酒宴となりて在祭
競走馬終の住処の秋高し
外つ国のいざよふ月を待ちわぶる
珈琲の知らず冷めゐる秋思かな

夏はあまり調子がよくなかったようですが、秋は10句に絞るには候補が多くて迷いました。
冬になってまだ満足の句はありません。
やはり、秋はものを思わせる材料が多いということでしょう。

このなかで、自己満足のベスト3は、

1 珈琲の知らず冷めゐる秋思かな
2 逆縁の墓を洗うて父老いぬ
3 天平の甍あまねく月明り

ベストワンの句はある句会に出句された「珈琲」に着想ヒントを得て詠んだものです。中七の措辞が浮かんだときには快哉を叫びたい気分でした。
ベストツーは、墓参の折、ある墓碑銘の享年、俗名からご子息であろうこと、そして建立者名が赤文字、すなわちまだご存命である父(であろう)の心情に思い至って詠んだものです。
ベストスリーは、唐招提寺観月会で足下の最低限の灯りの中で、松林から昇ってきた月にあの金堂の大屋根が照らし出された時の感動を詠んだものです。
材料は目の前にあります。しかし、常日頃から観察の目を養わないとなかなか拾えるものではないということを教えてくれました。

一年を通してみると、これまでに比べて一番実りが多かった年のように感じます。
来年は数えで「古稀」。まだまだ成長できると信じて、ささいなことにも「発見」「驚き」を見出だしていきたいと思います。

6 Replies to “15年の句から(後編)”

  1. 毎日作句するということが今や習慣になったようですね。
    どんなこともそれを継続することで、奥深い部分に触れることができるように思います。
    来年も一層の精進をされて、納得のいく句を作ってください。

    私の好きな後編ベスト3

    ①天平の甍あまねく月明り
    ②競走馬終の住処の秋高し
    ③絵馬殿に酒宴となりて在祭

    良いお年をお迎えください。

    1. 調子の波が大きいのが悩みです。
      季題が目に見えたり浮かんだりするときはいいのですが、そうでないと難しいです。ある意味、兼題句が苦手なのはそういうことかと思います。来年は苦手の題詠に磨きをかけなくちゃね。

      ベストスリーの在祭はいかにも地域の祭という感じで、老人会メンバーのパワーにヒントをいただきました。都会の祭とはちょっと違って土の匂いのする祭の打ち上げ光景です。

      では、来年も元気に迎えられますように。

  2. ほだかさん、ほんと伸び盛りのように思います。その作句姿勢がある限り大丈夫でしょう。ますます精進してください。

    私は「外来種混じりて咲ける千種かな」をいただきました。

    1. 人間国宝レベルの人でも一生勉強と謙遜されてますね。実際にどこまでいっても満足することはないんでしょう。
      それに比べたら成長曲線の途上にある人間というのは、伸び代が大きくみえて幸せかもしれません。

      いまは外来種が混じってない草野なんて探すのも大変かもしれません。
      たまたま12月号「山茶花」に、

      外来種ばかりと嘆く花野かな

      という似た句が投句されていて主宰がコメントをつけています。ちょっと長いですが花鳥諷詠についての所見が述べられていますので引用させていただきます。

      「遠目には美しい秋草が咲き乱れているのですが、近くでよく見ると、みな外来種の花ばかりだというのです。高原,湿地など、訪れる人が多いところに限って、こういう現象が深刻で、本来、たくさんあったものが、絶滅、あるいは絶滅しかけているという話も聞きます。何か対策を立てなければいけないと思いますが、立ち入り禁止にしても、植物の種は風が運ぶということもあったり、せっかくの観光資源を活用できないというような意見があったり、問題は簡単ではないようです。
       花鳥諷詠という行き方は、そういう、いわば社会問題に真っ向から立ち向かうというようなことはしません。敢えて、問題提起くらいか、暗喩という方法を取るくらいしかないと言えばないわけですが、それが気に入らないという人は、別の文芸方式を選択するしかないでしょう。花鳥諷詠は風流ごとではありません。何があっても、自然という大きな力に絶対随順するという思想です。絶対随順するというのは、無意志、無気力なのではありません。絶対随順を貫くという力強い意志の裏付けがあるのです。(以下略)」

  3. 今年は入選句も多く精進の賜物ですね。
    私も季語と遊ぶ感覚で歳時記を開きたいと思います。
    今年も「一日一句奈良暮らしから」のおかげで色々新しい言葉に出会えました。
    後半の好き順
      天平の甍あまねく月明り
      外つ国のいざよふ月を待ちわぶる
      地に触れて破芭蕉とはなりにけり

    1. 歳時記は日本語の宝庫ですからね。言葉から日本文化のエッセンスも伝わってきます。若い人にも読んでもらえたら嬉しいな。ぜひ遊んでください。

      「外つ国」は海外旅行した石畳の街を思い浮かべながら作ったものです。海外駐在していて、今日の暦に気がついたときなどしみじみ見上げるかもしれないと思いました。
      「地に触れて」は解釈が難しいのではないかと思いました。自分でもまだ詠みきれてない思いが残っています。ただ、あの葉が何かの拍子に垂れたりして強い風にでも吹かれたら間違いなく裂けてしまうだろう。それくらい大きくて自身を持て余しているかのような風情を詠みたかったのですが。

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