歯は抜かずに治す

抜歯して逢わねばならぬマスクかな

昔は前歯が欠けたまま平気な年寄りを見かけたものだ。

現代にさすがにそういう人はみないのは、予防対策の普及やら医療の進歩による効果なんだろう。
ただ、歯というのは大変微妙なもので、ちょっとでも歯がかけたり、抜いたりして、それまでのそれなりのバランスがとれたりしていたものを崩すようなことをすると、それが他の歯にたちまち影響を及ぼして、まるで玉突きのようにあちこちおかしくなるところがある。
それが、また歯の問題だけではなくて、他の臓器や部位に飛び火してしまうようなことが多い。
やたら、歯を抜くのを勧める歯医者は注意した方がいい。できるだけ抜かないで対処する処置を考えてくれる医者をさがしたほうがいい。
身近に親知らずを抜かれたがためにすっかり体調を崩したものがいるので、よけいにそう思う。

買物弱者

お総菜物色をするマスクかな

家人のスーパーにつき合うのは苦手だ。

とくに、いけないのが鮮魚、肉、乳製品など要冷蔵品売場である。これでもかと低温をきかせるので、近づくだけでもう悪寒を覚えそうになってできるならその前には立ちたくはない。
夏でさえそうなのだから、冬ともなるともっとひどい。
荷物ならいくらでも引き受けるから、どうか早く済ませくれと願うばかりである。
このあたりは、スーパーも遠く車無しではやっていけないが、足のない人は電車にたよるしかなく、夕食のおかずが足りないからとちょいとそこまで下駄履きでというわけにはいかない。
今日もまたお年寄り一人がスーパーの袋をいくつも抱えて電車に乗ってきた。

説得力

顎マスクせし内科医のタバコ臭

問診を受けていて、息に煙草の匂ひがしてくる。

外来禁煙を謳っている医者である。
まさに医者の不養生であろう。
酒と煙草は慎むようにと言われても、説得力がない。
心筋梗塞を未然に発見してくれた恩有る医者だから、まあ大目に見ておこう。

戸惑っている

言葉なく鹿煎餅を売るマスク

奈良公園の風の吹きっさらしで鹿煎餅を売っている。

煎餅を買うのはたいがいが外国人のせいだからかどうか、売り子はおおむね無口である。
へたすると、客の顔もろくに見てないのかもしれない。
そう言えば、概して奈良の人は静かである。ものを売るにも大きな声を張り上げるのをみたことがない。隣県に賑やかな都市があって、それとは好対照をなしている。何をアピールするということもなく、どちらかというとなにかにつけて「待ち」の姿勢なのである。
ただ、奈良らしいところはちゃんとあって、どこかの古都のようなよそ者への警戒心もあらわでなく、来るものは拒まない点であろうか。

急な観光客増も、喜ぶというよりは戸惑っている、というのがいまの奈良なのかもしれない。

立体

横顔は烏天狗のマスクかな

立体的なマスクのことである。

呼吸とかずいぶん楽なんだろうか。その昔マスクといえば風邪のときと決まっていて、ただでさえ鼻が詰まって息苦しいのにガーゼを当てたマスクをさせられるとさらに苦しいものだった。
最近では花粉症対策など一年を通じてマスクをしている人もいて、マスクの素材、種類、タイプもいろいろ改良されてるようだ。
ようだというのは、幸か不幸か、実はこの10年以上というもの風邪を引かぬようになってマスクとは無縁であったから今時のマスクの使用感がわからないのだ。ありがたいことだ。