正倉院展

天平のペーパーナイフと緩き冬

入館まで45分ほど行列。

平日というのに正倉院展は大変な人気だ。近鉄奈良駅を降りたときはみんなが奈良国立博物館に向かうのではないかと思われるほど、いかにもそれらしい雰囲気の人の群れ。
だが、瑠璃杯を見た途端息をのむような美しさに人波の疲れなんてたちまち忘れてしまうほど。ポスターに描かれた絵に描いたような杯とはまるで別物のような奥深い神秘的なブルー。当時の貴族たちはこれらを片手に遙かシルクロードからやってきたワインなぞをすすっていたのだろうか。時空を超えていろいろなことを想像させてくれる逸品であった。

ペーパーナイフというのは刀子(とうし)と云われる10センチほどの刀身とそれを装飾を極めた鞘。文房具なのだが腰にぶら下げる装飾品としての性格が強い。小さいとはいえ刀身は完璧な剣のかたちをしているうえ、1300年を経ても錆ひとつなく光り輝いている。

程よく

持て余す上着一枚冬ぬくし

しっかり着込んで来たのに意外に暖かかった。

寒さが久しぶりに緩んだらしい。しばらく歩くと汗ばむほどなので上一枚を脱いで小脇に抱えたものの持て余し気味。こんな日がしばらく続いてほしいものだが、それがずーっととなるとまた問題だろうし、冬の初めは五寒一溫くらい、終わりが三寒四温くらいが程よくいいかもしれない。

トレードマーク

眼鏡紐ゆれてつぶさに冬の御所

フリッカーに上げてある去年の写真を開いてみた。

源氏完読記念の京都宇治の旅である。
そのなかに句友二歩の笑った顔が大きくクローズアップされた写真がある。
京都御所見学のときの写真だ。
よく見ると、その顔に昨夜の名残があるのはいかにも彼らしい。
そして、どこへ行くにも彼の眼鏡には紐がついていて、それが一つのトレードマークである。

カメラに向かって笑顔を振り向けた、そのときの彼の目は限りなく優しい。

駆け足

いつもの子駅へ小走り冬の朝

朝、決まって前の坂を走りながら下っていく子がいる。

1時間に4、5本くらいしかないダイヤだし、それに加えて10月の台風以来まだ復旧してない徐行運転区間があるため間引き運転しているので一本逃したら大変なのである。
ひとに言えた義理ではないが、それでもああして毎日小走りで駆けていく子を見ると、たまには早く起きてみたらと声にならない声で応援しているのだが。
もう何年も見ているから、そろそろ高校3年生くらいになってるのかもしれない。
革製の黒鞄に紺の制服の似合うかわいらしい女の子だが、大人になりヒールに変わってもやはり駆け足をして駅へ向かうのだろうか。それともどこか遠くの大学にでも進学して、もうあの姿は見られなくなるのだろうか。