花籠

ちりぢりに通夜客別れ冴返る
料峭や通夜席甘き花の籠

まほろば句会の選者が亡くなられた。

この一二年めっきり足腰が弱られたが、直前まで元気に投句されて、最後は入院先で九十三年の生涯を閉じられた。
初めて句会というものに参加したのは六年前、都度眼前の季題のとらえ方など丁寧にやさしくご指導いただいたことが懐かしい。
この「料峭」という言葉を教えてくださったのも先生で、寒の戻りが厳しかった今日の風に似合う言葉であろう。
ホールの中は暖房もよく効いて花籠の百合やカトレアなど甘い香りが会場いっぱいに広がっていたが、外との気温差は大きく通夜の儀を終えても誰も語ろうとせずそれぞれ帰途についた。

雲雀野のオレンジ特急

風鐸の騒ぐは一基春疾風
風鐸の音を攫ひゆく春疾風
春疾風大風鐸を弄ぶ
料峭の風に風鐸響きあふ

平城京の復旧工事もずいぶん進んでいるようだ。

あまりの風の冷たさに逃げ込んだのが、大極殿すぐそばに完成した情報館。ここで、VTRなど鑑賞しながら暖房に身を温めて吟行再開。
外ではバーダーたちが身じろぎもせずに三脚に据えた望遠鏡を覗いている。平城京跡は鳥たちにとってサンクチュアリだけに、次から次へといろんな鳥たちが顔見せに来てくれて、今日の人気一番は「アリスイ」。半径10メートルほどの人垣の真ん中にゆうゆうと餌を探している。
朝の内は風花も舞って、耳も手も痛くなるほど寒くて雲雀は出ないかとあきらめていたら、やがて日が高くなってくると目の前のそこかしこに雲雀が揚がりかつ落ちてくる。家の近所でもよく見る雲雀だが、これほど多くの雲雀を目の前にするのは初めてだ。

雲雀にしばらく見とれていると、大極殿の大きな風鐸がおりからの風に激しく揺すられて、重厚な響きが聞こえてきた。どういうわけか,四隅のすべてが鳴るのではなく、西側のひとつだけが騒いでいて、そこに風が通っているのがよく分かる。
大極殿を見晴るかして、そのずっと向こうには若草山の末黒野が見える。

南に目を転じると、近鉄特急のオレンジがひろい宮跡を横切って行った。

雲雀野を分けて特急突っ走る