果てしなき闘い

エレベーター見知らぬ人と秋暑し

朝のうちに回覧板を回すといってもやはり暑い。

宅配で届く荷だって中までむんむんと熱い。
台風の余波なのか風も熱風で、西日を避けるための葭簀もその熱い風ですぐ倒されてまったく役に立たない。この分では毎日残暑の句が生まれそうだ。
炎帝との闘いはいつまで続くのか。

いちいち

餡パンの袋かけしを秋暑し

コンビニの握り飯もそうだが、なんで最近はあんパンやジャムパンまで一個ずつ包装しているのだろう。

もちろん、流通上,衛生上の配慮には違いないが、たかが餡パン、ジャムパンである。最近では主食にするというより、小腹がすいての一時凌ぎ、おやつ代わりに食うものだ。
そんな気軽な食い物を口に放り込みまでに、包みを開けるという儀式が煩わしいったらない。しかも、食い終わって片手には包みの端くれがぶら下がっておるわけで、傍から見てもさぞ不格好にちがいない。
ただでさえ暑い日がきりなく続くのに、ますます苛立ってくるのである。

風向一変

病害の山赤茶けて秋暑し

なんだか9月末頃まで毎日こぼしそうである。

「暑い」。
今日も体感温度は36度。西日のハンドルを握っていると頭がぼーっとしてくる。
奈良盆地はなにもかも焼けるようで、とりわけ周りの山がすごいことになっている。
「楢枯れ」現象で、あの三輪山ですら点々と赤茶けて被害が広がっていることが分かる。
最もひどいのは、法隆寺裏を走る松尾山から矢田丘陵にかけての山で、遠目にもはっきりと分かる広さまでやられている。去年から一段と猛威をふるっているようだが、その勢いは止められないのだろうか。このまま進めば盆地の景色が変わってしまうのではないかと心配だ。

願い下げ

秋暑く医院の駐車場せまし

今日は温度計に現れぬ残暑だ。

湿度こそ70%に届かないものの、朝から室内温度が30度を越えるようでは、少し体を動かしただけで汗がしたたる。
週間予報でも35度前後の日が続くと言うから、もうこれは関東に住んでいた時とはまるで違う気候だと言っていい。
西日本は残暑、東、北日本は日照不足というから、温暖化とは、なるほど、天候というものが極端に走るということらしい。
ということは、冬には極端な寒さがあるかもしれないということだが、どれもこれも願い下げにしたいものだ。

やり過ごすのがやっと

尿酸も宥めねばならず秋暑し

二八とはよく言ったもので、俳句の世界にも言える。

端的には、歳時記に収録される季語の数である。
「ホトトギス新歳時記(第三版)」を例にとると、二月は27ページ、八月は48ページ。七月の118ページに競べるといかに少ないかが分かろう。ただ、この歳時記では八月を立秋からのものとしているので単純な比較はできないが。
いずれにしろ、限られた季語の中から今日の季語を選ぶというパターンを繰り返していると、満遍なく選ぶというより偏りがどうしても出てしまう。
そして、この暑さである。今日で三日目だが、「秋暑し」にまた登場してもらうこととした。
この残暑をやり過ごすだけでも大変なのに、あれこれ持病を抱えていればなお暑さが堪えてくる。

西日厳しく

六畳に最期を看取る秋暑し
六畳に介護ベッドの秋暑し

なんか今年はほんとの秋がくるんかいなと心配するほど、「秋暑し」の句がいくつでも詠めそうな気がする。

別に八畳でも、十畳でもいいけど、暑い感じを出すためには六畳のほうがいいと思った。介護ベッドなどを入れればなお狭く感じるものだ。何より、病人など看取る対象を詠むよりは場所に拘ってみたのだのがどうだろうか。それは、できるだけ自分の気配を消して客観的な句にもしたかったからだが。
間もなく九月ともなれば西日はますます傾き、部屋のなかにまで容赦なくさしてくるようになる。簾をかけたりするが、それではとても追いつけない。駆けつけて来た親類縁者なども出入りしてさらに暑さが募ってくる。もともと暑がりだった病人なので、クーラーを強めに効かせたつもりでもまだ「暑い」と訴える。もう十分涼しくなってるよと聞かせても、半ば意識がとんでる病人の耳には届かず途方に暮れてしまう人たち。

実体験から多少脚色した句だが、母を見送って間もなく四年になる。

目にも暑く

虫害の山赤茶けて秋暑し

外出すると山のところどころが赤茶けている。

初夏の頃に気づいたのだが、初めはカシなどの常緑樹が葉を更新するときの若葉かと思っていた。
しかし、それにしてはちょっと色が濃すぎるかと思っていたら、ダジャレではないが、奈良に「ナラ枯れ」の被害が目立ってきたとニュースで言うではないか。
盆に会ったO師も、故郷の伊賀の山が痛々しいほど様変わりしていると嘆いていた。
この「ナラ枯れ」というのは、落葉広葉樹のミズナラやコナラを7月頃集団的に枯死させる「ナラ菌」と、それを媒介するカシノナガキクイムシという害虫がもたらす伝染病である。
放っておくと枯死した木に生んだ卵のサナギが来年にも羽化し、さらに被害が広がるのだという。

春日山はまだいいほうで、生駒山地、矢田丘陵、そして背にある信貴山などは惨憺たる状況を呈している。
毎年春になると樹木いっぱいに白っぽい花をつけて、山のボリュームがいっぺんに膨らむように見えたものだが、来年はそんな光景も少なくなるだろうと心配される。

撲滅するには、冬季の間に一本一本の木に潜むサナギを撲滅するしかなく、大変な作業になる。
菌と害虫が繁殖しやすい環境が増えてきているのが原因だという。そうだとすれば、温暖化との関係も疑ってみたくなる。
温暖化とは、台風の巨大化だけではなく地球全体の環境のバランスが狂うことなのだ。

「秋暑し」は「残暑」の傍題。
いつになったら暑さが収まるのだろうか