里山の春

蝌蚪生れて谷津の主役になりにけり

谷津というのは丘陵が削られて谷状になったところで、里山を形成する典型的な環境と言える。

谷戸、谷地とも呼ばれるが、関西方面ではあまり聞かれない用語である。
関東ならば各所にこの谷津が見られ、地形上水も集まりやすいところから田や畑として利用されることが多い。つまり、谷津と水とは切り離しては考えられず、豊かな環境が形成されることから、近年昔ながらの環境が残されているとしてクローズアップされることが多い。
春になると小川の水温も上がり、ちょろちょろ流れる水面は長くなった太陽の光を受けてキラキラ光っている。冬の間主役不在だった谷津も、澱みを見ると小さなオタマジャクシが群れをなして賑やかになってきたようだ。

ある風景

朽舟の泥曇らせて蝌蚪走る

不思議なことだが、浄瑠璃寺の浄土池に小舟が沈んだままだ。

底が浅くて全没はしないが、池の水面近くに大きく張り出した楓が緑なしてくると、その陰にも隠れそうなくらいになる。
ちゃんと水を抜いて手入れをすればまだまだ使えそうな気がするのだが、なにかの行事のときはそうしているのだろうか。
過去にも何回か來ているが、小舟が沈みかけているのは記憶にない。
あのまま、朽ちていけば泥舟となり、池の生き物たちの格好の栖になるにちがいない。
琵琶湖畔なれば、係留したまま朽ちていく舟というのも絵になるとは思うのだが。