独り占め

敷き敷きてなほ隙間なく銀杏散る

「銀杏散る」は「銀杏落葉」の傍題だという。

昨日の「黄落」も同じく傍題のひとつであるが、これは銀杏にかぎらず欅、櫟など黄葉が散ることをいい、ニュアンスがちょっと違うようだ。
人があまり訪れないが、意外に銀杏落葉が見事な場所がある。
例えば、初瀬の素盞雄(すさのお)神社の大銀杏である。全高40メートル、県下最大の銀杏である。境内全体を覆うほど樹形がすそ広がりに大きく、その落葉は境内のほとんどを埋め尽くすばかりである。
人も多くないせいか、誰の足にも汚されない散り落葉がふかふかと、それはみごとなものである。レンズの望遠効果で強調された画像のものとはまったく違う。
この時期、初瀬川を挟んで対岸にある長谷寺からは、見事に黄葉した銀杏が屹然と立っている様子をはっきりと認めることができる。そして階段の最後の一段を登り切れば、そこは誰も居ない境内。その銀杏黄葉、落葉を独り占めする気分は特別である。

デジャブ

黄落の真っ只中の絵描かな
黄落を浴びて写生に耽りたる
銀杏散るままに画帳の余白かな
銀杏散る画帳をのぞき見るごとく

画帳に銀杏が散ってとまった。

画家はそれにも気づかず夢中で筆を走らせている
この景色を前にも見たことがある。
しかも同じ場所。
鷺池のほとり、浮見堂前。
さらに折りよく、黄落の下通りかかった人力車のガイドの声も。
デジャブの世界。

力車停め車夫に聴きゐるひざ毛布