雨の間の雑仕事

黒南風の牛舎の泥に反芻す

湿った空気が重たい。

時折の雨に傘を持って出るかどうか迷うところだ。
案の定出かけようとしたら雨がぱらついてきた。
梅雨入り宣言こそ出てないが実質レイニーシーズン・インである。
雨の合間を縫って、うまく根付かなかった藷、成長の悪い茄子の植え替えと、土が雨で柔らかくなっているうちに雑草引きと。

滝雲

黒南風や暗峠雲の滝

生駒嶺の鞍部を雲が滑り降りてくる。

滝雲という現象だ。
今日のようなどんよりとした日によく見られる光景だ。
梅雨がもたらす低い雲が浪速から生駒嶺をせりだすように越えるのだ。
遠く若草山も、二上山の頭も雲にかすんでまったく見えない。

早々と灯を灯す夕べとなった。

目利き

黒南風や量り売り女の腰伸ばし

ここ数日、湿った空気の重い天気が続いている。

プランターの野菜たちにもダメージが大きく、まもなく収穫できると期待していた小玉西瓜が割れてしまった。雨が続いた影響だが、同じく雨に弱いミニトマトのほうは今のところ順調のようである。
海のない県に住んでると、どんよりした梅雨空に湿った南風が吹き込むことはあっても、黒南風と結びつけて詠むのは厄介で、どうしても海や浦、浜の景色が思い浮かんでしまう。
黒南風が吹くときはたいていは海が荒れているので船を出せないことも多いが、内浦の定置網なら大漁とはいかなくても何とか漁になることもある。
贔屓にしてくれる常連客のために、僅かばかりの水揚げの中から永年の目利きよろしくみつくろって今日も出勤だ。
かつては、尾鷲や紀伊長島などで量り売り女の姿は見られたが、今はどうなったろうか。

峠の牧

夏燕四角に牛舎くぐりけり
黒南風や牧の泥濘ただならず

今日は三重県境にある里山に吟行した。

九十九折の山道をたどると、峠近くからは露湿りの風に牧の匂いが混じってくる。
やがて売られる運命にある牛たちの牛舎に近づくと、その匂いがさらに強くなった。

見渡してみると、雨が近いせいか燕が数羽しきりに低く飛ぶ。
開け放たれた牛舎のなかに飛び込んだかと思うと、そのまま直線にではなく直角に曲がってくぐって行った。

霊気さえ

白南風の大台ヶ原霧消せる
黒南風の荒れて休漁熊野灘
黒南風の荒れて休漁ぜひもなく
黒南風の大台ヶ原吹き上ぐる
黒南風の湿りに霊気はらみゐて
黒南風の修験者まろぶ峰を吹く
黒南風の南都の領巾を重たうす
黒南風や御紋の領巾の打ち返り
黒南風の浜吹きたらず峡渡るく

黒南風は梅雨のうち吹く南風を言う。

この風が吹く頃空が暗くなるところから名づけられた。
対して、梅雨が明ける頃南風が吹いて空が明るくなるのを白南風と呼ぶ。
少々理屈っぽくはあるが、言われてみるとなるほどそうかもしれないと思えてくる。

周りを山に囲まれたヤマト、とりわけ南には熊野・大峯の重畳たる峰みねがつづく。
これら険しい峰を吹き越えてくる風にはどこか山の霊気が漂う。