清流の美声

きれぎれに瀬音混じりに初河鹿

狼像の前を台高山地を水源とする紀ノ川支流の高見川が流れている。

川としてはかなり上流に位置するのだがこのあたりは川幅も広くゆったりとした流れだ。しばらく散策してみると句材が限りないほどある。
著莪の花が乱れ咲いて沢から高見川になだれ込んでゆくかと思えば、沢水を引いた小流れの底にカワニナが点々とみられ蛍を予感するものがあったり、目の前の貯木場から崩れた材木が河原に散らかっていたり、橋の中ほどに立てばいかにもシーズン最初のような消え入るような、しかしはっきりと河鹿と分かる玉を転がすような美しい鳴き声が聞こえてきたり。さらに、河畔の木の新緑は透けて見えるほどまぶしく初々しい。

川の名前からして目の前にある大きな山はあの高見山ではないかと尋ねる人もいて、新緑の秘境を大いに楽しみながらの吟行第一歩である。ここで30分ほど時間を過ごしたあと、次に句会場の天好園に向かう道は高見山を借景に夏桜が望めるというこの季節最高のロケーションではないだろうか。

“清流の美声” への11件の返信

  1. この投稿を読んでいるとまさしく我が故郷と重なる部分が多くて懐かしさを感じます。

    実家の前は波瀬川、カワニナが生息し6月中旬には蛍が飛び交うはず。
    さらに川をさかのぼると矢頭山からの源流、そこには河鹿が棲みつき空気はひんやり澄み切って森林浴にはもってこい。
    河畔には山蕗が青々としげりシャガが自生。
    絵具を流したような新緑は目に眩しくきらめくような自然の美しさ・・・
    ふるさと自慢になってしまいました。

    1.   skyblueさんの故郷も素晴らしいですね。
       自然豊かな場所で育つのは、やはりいいですよね。
       おいしい空気を吸って、その土地で採れた旬の物を食べて、野山を走り回る、きっとこれは元気の素だと思います。

    2. 全くよく似た環境ですね。「河鹿」に「蛍」というのはよほどの環境でないと生息できない生き物ですよね。素晴らしい故郷でうらやましいです。

      1. きっと私は野性児の傾向が強く、前世はもしかしたら狼少女だったかもね?
        野山を裸足で駆けまわり咆哮していたのかも・・・
        そう思うとなんだか楽しくてたまりません。

  2.   文章から風景を想像するだけで、良いところだな、と感じます。
     花鳥風月を詠むにはやはりあちこち歩かないといけませんね。
     テレビや雑誌で同じ場所を見ても、そこには音も風も香も空気もないですものね。

    1. その場に立てば詩心というのは何となく涌いてくるものです。うまく詠めるかどうかとは別ですが(笑)。机上、頭の中で作ったものはすぐ分かると言いますしね。いい季節ですから句帖を持ってどんどん出かけましょう。12日(日)は俳句会の月例吟行が奈良公園で行われますので参加してきます。主宰に会ったことがないので楽しみですが、鹿の子とか、万葉植物園とかいろいろ句材に出会えることも期待しています。

  3. そうか、高見川は紀ノ川に注ぐのですか、大和川ではないのですね。そして県境を越えるともう櫛田川流域でしょうか。面白いものですね。

    いい文章を読ませてもらいました。せせらぎに河鹿の鳴き声ですか、正にニッポンの音の風景だと思います。気持ちよかったことでしょう。

    1. いまどき河鹿の声というのは秘湯の宿とかでないとなかなか聞けるものではないですね。おっしゃるとおりニッポンの音の風景は全てを洗い流してくれるような、ハートを浄化する声です。

  4. 河鹿やホタルが生息している地域は、清流があり自然豊かなところですね。
    夏に行くと涼やかで良いところではないですか。
    当方は朝10時に伊勢原のK君、磯子のK君と鎌倉駅で待ち合わせ、鎌倉八幡宮の境内の一角で行われたお茶会(巴会)に参加してきました。伊勢原のK君の奥さんがお茶の先生をしていて、ご招待を受けたものです。
    表千家、裏千家、宗偏流(伊勢原のK君の奥さんが所属)の三つの流派が共同開催するお茶会で、毎年5月10日に開催される歴史あるものだそうです。
    お茶会なんて会社に入社して間もない頃、会社の部活動のお茶会に参加して以来で、作法なんてほとんど心得のない小生でしたが、始まる前にひととおり伊勢原のK君から話を聞いて臨み、何とか美味しくお菓子とお茶をいただいて終わりました。男性は我々3名だけで、後は和服の女性ばかりの世界でした。
    なれない場で疲れました。

    1. 新緑のもとでのお茶会はさぞ気分爽快だったでしょうね。伊勢原のK君にお茶のたしなみがあったとは知らなかったですね。緊張しながらいただいているMasaru.K君、磯子のK君の表情が見えるようです。

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