ケとハレ

口聞かぬ画面相手に初買す

ケのものを買うのではなく、ハレのものを買う。

それが買い初めの対象だ。八百屋で野菜を買ったり、スーパーで味噌醤油など日用のものを買うのではない。
いかにも新年にふさわしく、新年をことほぐ買い物である。
おのずと心浮き立つ心地する買い物であるが、これだけネットショッピングが当たり前の時代となると、その楽しみもいまでは一瞬のクリックですっ飛んでしまいかねない。
今日は夫婦別々に買った商品が宅配で届けられた。僕の買ったのは電気歯磨きの替えブラシだが、はたしてハレと言えるかどうか。

聞く耳

侘助の庭の垣根の縄傷む

茶室の入り口脇に八畳ほどの広さの前庭がある。

四つ目垣が張り巡らされ、しっとりとした苔の庭に侘助が小さな花を下向きに咲かせている。
柴折戸も竹を組んだだけの簡素なもので外界と隔てる意匠はなく、しかも立て付けがゆるりというかゆったりとやや傾き加減の趣がなんとも心地よい。
苔には鳥が落としていったものが芽生えたと思える小さな万両が早くも実をつけていて、緑のなかの紅のアクセントが効いている。これも意図したものなのかどうか分からぬが、見事な意趣である。

ここ、吉城園は県の所有であるが、近々民間のディベロッパーに売り渡され高級旅館に生まれ変わるという。
東大寺敷地に隣接して一帯の緑の一画をなしていて、大仏殿とちょっと離れただけなのにうって変わって閑静なところが魅力なのだが、反対する声を無視して県は強行突破の姿勢を崩さない。
県立高校の統合問題も住民からひろく意見を聞くことなく、一方的に方針を決めては断行するらしい。
宿の少なさ、公立学校の冷房化率では全国ワースト、あいかわらず時代遅れのお上主導によるイベント行政。
県政の貧弱さは近畿六県のなかでも際だっているといえよう。

十輪ほど

小さきを羞づるがやうに冬の梅

庭の白梅が咲いた。

ここ数日の暖かさにさそわれたか、今朝十輪ほどを発見できた。
もともと早咲きではあるが、これから寒さのピークに向かおうというときに開くのは珍しいかもしれない。
剪定がうまくいったか、細かい枝をいっぱいだしてそれぞれにびっしりと蕾がついている。花はまだ小さいというか、開ききらないというべきか、身を固く縮めるようで蕊もまだまだ未開のまま。
このまま順調に開花が進むとは思われず、今年は長い間楽しめるのではなかろうか。

慈雨となれ

撫牛の艶をましたる寒の雨

今日は大寒。

これから2週間ほどが一年でも最も寒い季節。統計では大阪は29日が底だそうである。
だから、いつもこの時期にセンター試験が行われるのが不思議でならない。雪のない地方はともかく、日本海側など雪の多いところでの交通事情などを考えると、それだけでも受験生に大きなストレスをかける恐れがあるからである。
今年は大きな混乱もなく終了したと聞く。何よりのことである。
受験生といえば、各地の天神社で合格祈願のお守りをいただいたり、絵馬に願いをかけたひとも多いであろう。
当地では朝から暖かい雨が降って、寒の雨とは思えないやさしい雨であった。受験生の未来に等しく慈雨があふれますよう。

旧石器時代へ

サヌカイト工房跡の竜の玉

二上山にはサヌカイト(黒曜石)が産出した。

サヌカイトを割ると鋭い断面をもつことから石器の材料となった。二上山のサヌカイトが各地に運ばれて、石器の材料となったことはよく知られている。
わが家から500メートルほど坂を下った大和川畔でも石器工房があって最近発掘されたが、いつも散歩するコースにも旧石器時代(15,000~16,000年前)!の工房跡があり、そこは二上山をくっきりと眺められる高台の絶好のポイントにある。
発掘調査の終わったいまは緑道として整備された道となっていて、起伏のある地形から当時をしのぶしかないわけだが、アオキやガマズミなど実をつける木も随所に散りばめるように植えられている。

憧憬の山

言の葉に弟背と申す山眠る

散歩するとき常に視野にある山である。

山から見ると北にあるわが家からは、二上山は雄峰のかげに雌峰が入ってひとつの山にしか見えない。盆地中央部くらいになるとようやく双耳峰であることが理解できるが。
大津皇子が葬られたこの山を「今日から弟と思おう」と詠んだのが姉の大伯皇女だ。古代史ファン、なかでも大の皇子ファンとしては、いつ見ても特別な山。この山を起き伏し眺められる幸せは代えがたいものがある。

ヒートショック

外風呂の裸電球寒月夜

ヒートショックに気をつけろ。

内風呂の時代ですら暖房の効いた部屋と脱衣場や浴室には温度差があって、毎年かなりの命が失われているというのだ。
まして昔の外風呂、外厠の時代、多くの人が今でいうヒートショックで命を落とした。
親類にも明け方の外厠で急死したものがあり、当時はこうした事故は特段珍しいものではなかった。
真っ暗な庭を横切る背には青々とした冬の月。
寒々とした浴槽の天井には黄味をおびた白熱灯。
すきま風だらけの浴室では半身浴とはすましてはいられず、肩までずっぽり浸かるのだった。
そりゃあ、血圧の乱高下で心臓にはいいわけないわな。