伏流水

川端に飯粒沈む秋の水

関西には「川端(かばた、また、かわばた)」と呼ばれる水場が多い。

清冽な伏流水が豊富に得られる土地ならではの風景で、有名なところでは滋賀県高島市針江地区、梅花藻でも知られる彦根市醒ヶ井地区などがある。
針江地区では比良山系の伏流水が各所に湧いて、これを飲料や炊事などの日常用水として巧みに利用されている。伊吹山系の伏流水が豊富な醒ヶ井では鱒の養魚が盛んに行われ、五十年近くも前に遠足で訪れたことが懐かしい。
同じように、関西以外でも鳥海山麓など豊富な湧水があるところでは、集落で共同利用することも見られ、上は飲料、中は炊事、下は洗い物用として利用する暮らしぶりがいまだに守られているところもある。
伏流水というのは水温、水量とも一年を通して変わらず、夏は冷藏庫の、冬は温水器代わりのエコライフを支えるが、水澄む秋は大根や芋を洗っては菜屑が流れたり、畑仕事後の鍬などの泥を落とてもすぐに透明な水に戻ったり、ひときわ趣が深い。
ここ、大和盆地には扇状地でもなく伏流水と呼べる湧水はないが、洞川など山間部に入れば大峯山系からしみだす名水が得られ、それを利用した豆腐などの特産物が知られているが、共同水場という風景は今はもう姿を消したのであろうか。

“伏流水” への4件の返信

  1. 富士山の伏流水も有名ですが近場では醒ヶ井ですかね。
    地形上か、当地ではあまり聞かれません。
    琵琶湖一周ウオーキングをしたときは湖岸の民家でよく見かけました。

    昔は実家でも川の水をうまく利用していましたね。
    井戸もありましたが土物は前の川で洗ったり溝川と呼ばれる水を利用したりと・・・

    1. ときどきBS3で「水」シリーズで全国の水の風景を放映してます。さすがNHKの、ぜいたくな機材、スタッフ、時間をかけて丹念な取材による美しい映像にほれぼれしてきます。
      水は今回のように悲惨な災害をもたらしますが、うまく折り合いをつけながら農耕日本の風景を形成してきました。日本の美には欠かせない存在かもしれません。

  2. 川端に飯粒沈む秋の水

    ほだかさんは 本当に なんでもよく知っていますね。
    伊吹山系の伏流水ですが、小生のオヤジの実家が東浅井郡(今は、長浜市に統合されてしまいました)の虎姫で、家の道路脇には幅1mぐらいの清流が流れており、食べ物の洗いや冷やしは すべてこの清流でやっていました。(いや多分、いまもそうだと思います)
    この句の ”飯粒沈む”なんて 実際にこうした清流で洗い物をしたものでないと 絶対に出て来ない表現です。
    末句に”秋の水”で締めたことで、そろそろ清流が冷たくなる季節だ、と言う雰囲気が とてもよく出ています。

    1. タイガースファンにとっても有名な虎姫ですが、wikiで見たところやはり虎御前の伝説というのは「水」にちなんだ逸話が残っているのですね。昔から水が豊だったに違いありません。伏流水を提供する伊吹山は水といい、薬草といい、古代から地域の生活と密接に関わってきたのでしょう。

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