味が勝負と

ごきぶりの牛脂まみれの床走る
新妻の別の顔見し油虫
ごきぶりの宿の詫び状菓子添へて
油虫親の敵とばかり擲つ
ごきぶりも立ち回り上手も好かん

店は汚いが味はよい。

そんな店がだんだん姿をけしてゆく。
床が永年の脂でぎとぎとして、いまにも転びそうになるくらいスリッパリーなのに、店員は汁一滴もこぼさず丼を客席に運ぶ。
あそこのラーメンは最高だったなあ。