広大空間

枯色の背なにおんぶのばったかな

2センチにも満たないバッタがさらに小さいばったを負ったまま動かない。

バッタというとあのキチキチ言いながら飛ぶのをイメージするだろうが、わが庭にいるのはほとんどこのような小さなバッタである。あのサイズで交尾するくらいだから、もうこれ以上は大きくはならない種類なんだろう。
これらのバッタはなぜか水栓の周りにいることが多く、朝はいつもご対面。かといって、水が身にかかるのは嫌いらしく飛沫がかかるとさっと逃げてゆく。
人間にとっては一メートル四方、立方に過ぎない狭い空間だが、彼らにとってはきっと広大な空間としてどこでも好きなように生きていい空間にちがいない。

爽やかな疲労感

ばった跳ぶ広き農業学校跡

庭に出ると小さなばったが逃げるように跳ぶ。

快晴だが、久しぶりに乾いた空気で風がどことなく涼しい。そこで、思い切って気になっていた雑草を退治することにした。
汗はもちろんしたたり落ちるが、蒸し暑くないので二時間くらい何とかもちそうだと思った。
草を刈っていると、キチキチ君だけでなく若いカマキリ君も慌てて逃げ惑う。
予定の分を終わって汗まみれの体にシャワーを浴びると、その後はまるで汗をすべてかききったように肌がサラサラして気持ちいい。この感覚は、海水浴を楽しんだあとシャワーで海水を洗い流した後の、爽やかな、軽い疲労感に似ていると思った。
この感覚はすっかり忘れていたものだが、それだけ運動から遠ざかっていたことを示すにちがいない。

重い腰を上げてさえしまえば、まだ何とかなる体力は残っていそうなのが分かっただけでも収穫である。