この機に乗じ

熱出して一房まるとマスカット
大阪を越ゆる山辺の葡萄園

卵なんて昔は病気のときくらいしか食べられなかった。

バナナも同類にはいるだろう。
まして掲句のような、マスカットなんて庶民の口には遠い遠い存在だった時代。
熱出せば、いいところが母の作ってくれた林檎のすりおろし。
それに、葡萄と言えばせいぜいデラウェアで、それも昭和30年代も後半からじゃないだろうか。いまでは、いろんな種類がふえてよりどりみどりだが、それでも大粒種となるとなかなか高価である。これを一人で平らげるというには勇気が要って、ほとんどが家族みんなでつまむのである。
寝込んだのをいいことに見舞いの葡萄がたちまち病人の胃袋におさまったか。