空鉢護法堂へ

護摩壇の灰ひとしきり大根焚
大一個小は二個入り大根焚
Tシャツで登り来る子に大根焚
捨箸を竈にくべて大根焚

信貴山大根炊会

信貴山の一番高い雄岳にある空鉢護法堂をめざした。

舞台がせりだした立派な本堂が有名で、その脇から参道があるらしいというのは知っていたが今まではせいぜいが本堂止まりで引き返していた。毎日日課のように信貴山を登っている人たちから空鉢まで登ってはじめて完結するのだと言われていたので、いい機会だと思ったのである。
というのも、この日千手院で大根焚会が行われているので吟行のつもりでお詣りしたからである。「家内安全」のお札をいただいてまだ時間があるので、いつも仰ぎ見るだけの双峰の雄岳、弾正の信貴山城址に立ってみることにした。
行程は八丁だという。ざっと800メートル強といったところか。意外にあるなと思いつつ行くと坂がだんだんきつくなる。あと四丁だという里標のあたりから、九十九折になっている階段が覆いかぶさるように前に立ちふさがる。この辺りから千本鳥居が続く。祈祷のお寺らしく鳥居は全国からの寄進だが、なかには懐かしい郷里の地名もあったりして気分も和む。
あと一丁だというあたりはもう稜線に出たのか風もよく吹き渡る。やがて頂上らしき雰囲気になると信貴山城址という大きな石碑。そこから生駒山方向に向けての尾根のあたりに中世の山城が展開されていたらしい。
さらに進んで頂上に空鉢護法堂がある。ここは「龍王の祠があり「一願成就」の霊験あらたかな守護神として信仰されて」(以上信貴山公式ホームページより)いて、お堂の南はちょっとした舞台になっていてそこからは二上山、葛城山、吉野、大和盆地南部が一望の素晴らしい眺めだ。

信貴山・空鉢護法堂より南を望む

「空鉢」というのは信貴山縁起に描かれている話で、長者の倉を托鉢の鉢に乗せてこの山頂に飛ばしたということにちなんでいるとか。

ところで季題の「大根焚」は京都鳴滝了徳寺の行事をさし「焚」の字をあてるのたいして、信貴山は「炊き」をあてている。興りは数十年前伊賀の篤農家から大根を寄贈されて以来だという。