クラクラと

室咲いて蘭の香強くなるばかり

蘭がつぎつぎに開いてきた。

ひとつだけでも十分に匂ひが強いのに、今では部屋中にたちこめて頭が痛くなるくらいだ。
まるで、百貨店の一階に迷い込んで、各社の化粧品のミックスされた匂ひに閉口している状態と同じである。
蘭の花の期間は長いので、もしかすると年を越してもまだ咲き続けるかもしれず、ちょっとクラクラとする気分である。

眠れよい子よ

室咲いて嬰に和める医院かな

みんな月数を尋ねる。

一か月の嬰児が母親に抱かれてすやすや眠る。ときに笑顔を見せるのは、夢の中でもお母さんにあやされているのかもしれない。
病院で順番を待つ時間というのは何とも味気ないものだが、安らかに眠る赤子を見ていると、部屋中に何とも優しい和やかな気分が広がるのだった。

春は近い

あてがひしスペースほのと室咲けり

いつもは蘭の鉢を寒を避けるため取り込む場所が、今年は子猫たちがいて土を悪戯されるので、書斎を明け渡している。

ふだん暖房しない部屋なのでなかなか成長できずにいたが、今週あたりから蕾が急に膨らんできて咲き始めたようだ。こうなると毎日眺めていたくなるが、暦のうえでもまもなく春、実感としても春がそこまでやって来ているような気がしないでもない。