捨てかねる

弾くことの絶えて春逝くギターかな

今は故人となった友の遺品だ。

貧乏学生が使っていたギターだから、たいしたものではないはずだが、これが意外に音が良い。さんざん練習でこき使ってボロになったからと、お払い箱になって私の手許に來た。その後しばらくは練習に励んだものだが、社会人となっていつの間にかケースにお蔵入りしたままとなった。
ながく押し入れに眠っていたのをすっかり忘れていたが、還暦を目前にして彼が亡くなり、この引っ越しにも捨てるに捨てられずまだ手許にある。

半世紀も昔、フォークソングが一世風靡し、ギターを弾けるものは羨望の眼差しを受けたものだ。
もっともポピュラーなものでは、「禁じられた遊び」で、ギターをやるものなら誰でもチャレンジした曲だ。
もうそろそろ捨てどきと思いつつ行きかねるギターである。