柴栗

栗大樹竹の侵すを負けてゐず

もう実は落ちてしまったようだ。

電車の窓からいつも見える山栗の大木があって、今年は実がいっぱい成っていた。
背後には伸び放題の竹林が迫り今にも飲み込まれそうだが、なんだか両足を踏ん張って背中で押し返しているようで頼もしくも見える。
あの大きな栗の木の下に行けばいっぱい拾えるだろうと思うが、他人の敷地に勝手に入ることもかなわずいつも見ているばかりである。
栗にはいろんな傍題があって、「虚栗(みなしぐり)」「柴栗(山栗)」「焼栗」「栗拾ひ」などその数を全部並べたら大変なことになりそうである。
最近テレビで知ったのだが、四万十川流域でとんでもなく大きく甘い栗が栽培されているそうだが、いまだ流通するほどの量は生産されず手に入れるのは難しそうである。

いっぽうで、ヨーロッパなどでよく見る焼き栗は山栗サイズであり、これもまたうまそうである。

てのひらに柴栗妻がのこしけり 石田波郷

こんな句が好きである。

鬼皮と知る

栗を剥く専用ナイフの講師かな

天津甘栗が好きである。

天津甘栗なら腹を爪で軽く割り、親指で横に強くつぶせば簡単に取り出せて何の問題もない。
しかし、茹で栗を手で向きながら食べるときに爪を傷つけたりするし、栗飯、渋皮煮、栗きんとんなどに料理する場合など皮の処理が問題となる。
見るとはなしに見ていたテレビの料理番組で渋皮煮なるものを作る場面があったので最後まで見てみた。
表の強面を鬼皮と言うのを知ったのもこのときである。
思ったのは、皮処理の壁さえ乗り越えれば、あとは大してむずかしくはないようであった。

店に出回っている時期であるので、甘い渋皮煮など作ってみるのも悪くなさそうだ。

観光農園

栗焼けるほどに香ぐわし麓かな

家の前の道を10分ほど上ってゆくと信貴山に至る。

途中の体験農場は地元では観光農場としても知られ大阪など他府県からの客も多いという。この時期はさつも芋掘りやら栗拾いなどが人気のようである。拾ったばかりの栗をその場で焼いて食う。そらぁ、うまいに決まってるがな。