曽我の梅

梅見んと湘南電車のさてどこに
梅便り聞きて湘南電車かな

「梅」と「梅見」は別季題である。

梅は文字通り「梅」そのもので、白梅、紅梅、梅林、梅園などを傍題として持つ。「梅見」は「観梅」と同義で春の花見のさきがけ。冬季はこれを「探梅」と呼んで、寒さの中に春を求める行動をいう。
湘南電車なんて今どき言う人はいないだろう。国鉄時代の呼称で、東海道本線の湘南地域を走る車両である。熱海、小田原あたりは暖かいこともあって梅や桜は関東のどこよりも早く咲くし、梅や桜の名所も多い。

庭の枝垂梅は、小田原の曽我梅林に梅見の折、土産に買ってきた苗を下ろしたものだ。かれこれ十年以上も経つだろうか。蕾もまだ固そうで、曽我よりはずいぶん遅れている。

ファインダーの笑顔

シャッターを頼み頼まれ梅見客
町内会どっと繰り出す梅見かな

小さな梅林だが、ちょうど三分咲きくらいが主流。

暖かいうえ、休日ともあいまって馬見丘陵公園は、家族連れやらグループやらで大賑わい。
冬の鳥もまだ留まっているので、ルリビタキなど珍しい鳥たちもいっぱいいて、大きなレンズを抱えるようにして陣取る人たちもいる。

梅見

こちらも首からカメラを下げているせいか、シャッターを押してくれと頼まれること二、三度。
寒い日から解放されて、梅を愛でる人たちの表情もゆるんでいる。ファインダーの向こうには、笑顔いっぱいの春の日である。