椎の花モルト生まるる香に咽び
東海道線山崎駅ホームに降りたつと強烈な椎の花の香り。
天王山がそそり立つようにホームを見下ろしている。仰げば山のところどころが椎の花とおぼしく、白く盛り上がっている。
昨日は高校同級生のI君のお世話になってサントリー山崎蒸留所の工場見学会だ。I君は同社で長年勤務し、今も系列企業の幹部。同窓会と言えばなにかと彼のお世話になることが多い。俳句仲間でもあり、ときに放つ粋な句は彼の鷹揚とした人となりを語るものである。
この日は地元関西から13人、本拠地三重県から23人、総勢36人のちょっとした同窓会である。なかには卒業後50年ぶりに再会を果たして名前を確認し合う場面もあった。
サントリー山崎蒸留所と言えば、あの世界に誇る「響」「山崎」の故郷。JR線に沿って車窓からもよく見えて、同社の宣伝ポスターなどでもおなじみの光景である。木津・宇治・桂三川の合流するところ、後背の天王山がもたらす天然の名水「離宮の水」や適度な気温・湿度などウィスキー生産には最適な立地だと言う。
工場に一歩足を踏み入れただけでもう甘い麦芽の香が立ちこめる。蒸留ポットが薄暗い光に輝くさまが美しい。
約一時間の見学には試飲タイムも含まれて、「山崎」のハイボールが絶妙の味。家庭で単純に混ぜ合わせるだけではなかなか出せない味で作り方にも作法があるらしい。ハイボールは最近若い人の間で人気だと聞くが、巷の店でこれくらいうまく飲ませる店というものは今まで出会ったことはない。
ここ山崎は、鎌倉時代から戦国時代にかけて石清水八幡宮の神人たちによる「大山崎油座」が、畿内において独占的な権益を占め権勢をふるったとされ、そんな油の歴史と関係があるのかどうか同地の老舗天麩羅店で昼食会だ。
近所には油の神様をまつった離宮八幡という神社もあるらしいが、散会後宇治に寄るという三重県組と別れ関西組はアサヒビール大山崎山荘美術館へ。レポートはまた明日。