海明け

流氷や北方諸島しらじらと

目の前にある外国。

それを距つ海に、外国から流れてきた氷が覆う。
一衣帯水というが、この氷を渡っていけば外つ国に至るのも不可能ではなかろうか。
そんなことすら想像してしまう光景が顔面に広がっている。
観光客には嬉しい光景だが、港が閉じこめられるなど現地に住む人たちにはどういう風に映るのだろうか。

「流氷」は春先にもっとも多く見られることから春の季語とされる。
この流氷が沖へ引くように流れ、「海明け」を迎えるとオホーッツク沿岸に春が到来する。
ある北海道出身作家が同名の「海明け」という小説をものにしているが、この作家は若い頃騙されて樺太に売られ、そこの缶詰工場で働かされるジャコビニという経験を持っている。
たしか、その小説もまた、暗く陰鬱とした世俗から解放されるその象徴として「流氷」を描いたのだった。
引っ越しの時ほとんどの本を捨てたが、この作家のものは全部残して手許にある。ひさしぶりに紐解いてみようかと思う。