春先の雪に

淡雪や明日を疑ふこともなく

夜来の雨が10時頃から雪に変わった。

といっても、降り積もるようなものではなく地面に落ちた途端に染みいるように消えていく、いわゆる淡雪なのだが。この春雪の光景をしばらく窓越しに見るともなく眺めていたら、随分昔のことなどが脳裏に浮かんでくるのだった。

雪の記憶といえばスキー場の大雪や、東北や信州の温泉場での積雪、そこへ至るまでの踏み固められた雪道などがあるのだが、都会あるいは雪のない地域にいながらにして見る春先の雪には殊の外思い入れ深いものがある。それは、期末試験で当てにしていた人が大雪で来られなくなってその科目を落としてしまった苦い記憶などもあるのだが、いよいよ卒業を前にして新しい世界に踏み出そうという期待に胸膨らませた日々に重なる季節の意味合いの方が強いからである。

あれから40数年、雪に降り込められた今日はいくつかの本を静かに読んでいる。