一区切り

立錐の余地なくあふれ燕の子
おしくらにこぼれんばかり燕の子

親が作った巣が小さく見えて、子供たちがこぼれそうである。

親が餌を運んでくるたび、いっせいに騒ぐものだからはらはらしてみているが、もちろん簡単にはこぼれない。
ただ、ときどき下に落ちる子もいるようだから、さもありなんとも思う。
巣立ちが近いと見えて相当大きくなっている。顎の下から胸にかけてのえんじ色がはっきり見えるほど餌をねだる姿は生きるのに精一杯の仕草である。
これがちょっと気づかないうちに巣立ちしてしまうと、いちまつの寂しさを感じつつ今年の燕のシーズンにひと区切りついたという思いにひたるのである。

スタンドで

工場のなかが産屋よ燕の子

ガソリンスタンドの工場で燕がしきりに出入りしている。

整備工場のなかに巣をかけたようである。
主に聞けば、夜はシャッターをおろしているという。
民家であれば、家人も同居しているので早朝から賑やかに鳴いて催促もできるだろうに、翌朝は主がシャッターを開けてくれるまでやきもきしてるのだろうなと想像するだけで、なんといじらしい生き物よと思ってしまう。

元祖臙脂色

子燕のめいめい大口広げをり

巣立ち直後と思われる燕が三羽、枯れ枝に止まって親鳥に餌をねだっている。

見ればなるほど、下あごから胸にかけてもう立派な臙脂色。Wカラーである。
揃いも揃って大口を開けて餌をねだる姿がかわいい。
多分一週間もしないうちに親離れして自分で餌を捕るようになるのだろう。
さいわい虫がたんと飛ぶ季節がやってきた。