急ブレーキ

一尺の甕をたばしる目高かな

商家の軒先に昔ながらの金魚鉢があった。

鉢も水も透明でよく維持されているが、どうやら飼われているのは金魚ではなく目高のようである。
思わず駆け寄ったら、それが目高を驚かせたようで、かれらは一斉に迸ったものの、哀れなるかな身の隠しようもなく、鉢の中をせいぜい10センチ程度移動したに過ぎないのだが、ブレーキがよく効いて集団が瞬間に停止するのは見事なものだった。