和の空気

病床に秋の陽散らす障子かな

障子を透かせた明るい秋日が病人の部屋に広がっている。

障子、その和紙の効果だろうが、秋の陽はまだまだ強いがその直射日光をうまく分散してくれて、部屋全体を優しく包んでくれる。これがガラス越しだとこうはいかない。和のもたらす穏やかな空気感というものに日本人はどれだけ救われてきたことだろう。
病人も穏やかに眠っているので妨害しないようにそっとその場を離れた。

釣瓶落とし

駅ひとつ行く毎沈む秋陽かな

桜井からの帰りは大和八木経由で近鉄・田原本町線というローカル線で王寺町駅まで。

ちょうど盆地の真ん中を西北に横切るような形ですが、この線からは西側に二上山がよく見えるのです。
春分、秋分の頃は飛鳥から見ると夕陽は二上山に沈みます。
田原本町線は飛鳥よりはだいぶ北寄りですから、この時期夕陽は二上山と生駒山系の間に落ちてゆきます。
この日は夕陽が紅く染まってちょうど沈み行く時間だったのですが、各駅停車の電車が駅一つ進む毎にどんどん落ちてゆきます。もう「釣瓶落とし」を実感する季節なんですね。