高原の落日

落日の大芒野を荘厳す

日がまさに沈まんとするとき、光芒は頂点に達した。

山の端に日が沈むまで誰も帰ろうとはしない。
あるものはシャッターを切り続け、またあるものは凝視したまま動かない。
空は澄み、風も穏やかな日と言うのは、年のなかでも数えるくらいであろうし、こういうシーンにまさか恵まれるとははるばるやって来て本当に良かったと思う。
県内の曽爾高原の芒原であるが、もうあれから何年たつだろうか。秋が来ると、あのときの感動を句にしようともがくがいまだに授からない。

立ちつくす

芒野の逢魔時の無言かな

芒が一番美しい頃。

とくに逆光に透かして眺める芒が素晴らしい。風に揺れて穂がきらきらと、目にも眩しいばかりである。
昨日高速道を走っていたら、中央分離帯や路肩の穂がどこまでも、風圧に揺れるからだろうかキラキラとしていつまでも見飽きなかった。
折しも除草工事中で片側通行となっている部分もあったが、できるならもう少し先延ばしにして長く楽しませてもらいたいのにと残念に思った。

遠くの山の端に日が沈もうとしているが、誰も立ち去ろうとはしない。一面の芒が逆光にきらめく時をいつまでも目に焼き付けたいからだ。

快晴無風

芒野や子狐ぴょんと出るかもね

天気があまりにもよかったので、思い立って曽爾高原の芒が原の夕陽を見に行った。

曽爾高原へは本伊勢街道の三重県境手前でちょいと逸れるのだが、もう午後3時は回っているというのに大変な人出だ。亀の山という亀の甲羅のような形をした山の裾がすべて芒の原っぱで、真ん中にある亀の池という湿地帯をぐるりと囲うようにある遊歩道には午後9時まで灯明がともされるらしい。兜岳に沈む夕陽を逆光にして芒を撮り終えたカメラマンたちはさっさと帰り支度をしているのだが、若いカップルたちはまだまだ帰ろうとしない。

芒の原に立ち入ってカメラにポーズをとる小さな姉妹は、まるで芒の原で遊ぶ子狐さんのようでとても愛らしい。