乾いた風景

芽柳や女スマホに余念なし

車中から一本の見事な柳が見えた。

芽吹いて数日というところか。それでもいかにも柔らかそうな枝が見事に垂れていて、風もないのか、田園風景のなかの一点として絵になっていた。車中で気づく人もなさそうで、ほとんど全員といって言いほどスマホ画面に目を落としている。
外は柳青んでいかにも風景が柔らかいのに比べ、車内には乾ききった風景が広がっている。

地味に

芽柳の枝ふれあうて風誘ふ
遠目にもあをむ一本柳かな

芽柳を手にとって見ると、すでに花芽をつけているのに驚く。

柳の花とはイメージがないが、考えてみると、植物である以上たとえ目立たなくても生殖のための器官があるのは当然であろう。
だが、NHKのチコちゃんではないが、「ぼーーっと」生きてると柳にもそんなことがあることさえすっかり頭の外にあるものだ。今度見かけたら、どんな風に咲くものなのか、とくと観察してやろうと思う。

硬と軟

歌碑撫づるやうに芽柳揺れにけり

佐保川には万葉歌碑が多い。

川面の上をすっぽり覆うほどの大きな柳がおりしも芽吹いたばかりで、幹の根元にある坂上郎女の歌碑を抱くように揺れている。
歌碑の堅い感触と柔らかい柳の対照が絶妙なバランスを見せる瞬間だった。