都心から30分の秘境

杉を植う百年のちの児孫へと

葛城山の裏(奈良から見ればだが)は大阪とは思えない自然がよく残されていることをテレビで知った。

900メートル級の山々は急峻な渓谷をうがち、いたるところに滝が見られることから、都会に近い秘境とも言える。関東で言えば、新宿の高層ビルなどが望める高尾山みたいなものであろうか。
頂上が一面芒原である岩湧山は、ヘリからのテレビ中継でよく紹介されるところで、風に揺れる芒野は秋が深まったことをあらためては感じる映像である。
さらにまたここが、屋根材の茅の特産地で、材質が良質であることから全国からの注文が多いということも初めて知った。今でも機械に頼らず手刈りであることが品質のカギだということだが、アクセスの悪い山頂であることときつい傾斜によって機械化が阻まれた副産物と言えるかもしれない。

このほかにも、自生の黒文字に注目して楊枝の産地となったり、百年かけて目の詰まった杉をじっくり育てる林業など、地域の特性を活かした営みが、大阪から電車でわずか30分のところに今も受け継がれているのは驚きでもある。