地域共生

発電の余熱が恵む若布かな

東電の某発電所ではこの時期、生若布を地域の関係先に配り歩く習わしがあった。ただ、3・11以来同社は大変厳しい環境に置かれているので、今もこの習わしが継続されているかどうかは分からない。

発電所と若布の関係だが、発電所の温排水を海に放流するとその排水口周りに多くの生き物が生息する環境ができる。たとえば若布のような海藻類ができると、小魚が棲みつき、それを狙った大型の魚も寄ってくるという具合だ。

発電所の温排水はもちろん厳しく管理されているので環境に悪影響がないどころか、一年中一定の温度で放水されるので生物たちの生育も順調で若布などもたいそう立派に育ってしまう。これを清掃する目的もあって年に一度大がかりな若布刈りとなるのだ。口に入れても問題ないかどうか、これも環境がちゃんと守られているかどうかのリトマス試験紙でもあるわけだ。

また、このように周年温かい排水が流されていると、本来秋深くには深場に落ちてゆくはずの魚たちも居着くことになるので、それを狙った遊漁船も出る。君津あたりでシマダイの強い引き味を楽しませてもらった記憶が懐かしい。

俳句を始めるようになって若布は春の季語であることを知ったが、この時期になると若布を満載したトラックから若い従業員何人かが降りてきて生若布をドサリと置いてゆく光景を思いだす。