納棺

生前の母が欲せし蒸かし芋

食べたくても食べられない辛さ、苦痛が最後に待っている人生。

母を退院直後我が家に引き取ったのだが、すでに流動物以外は食べてはいけないと言われていた。腸が処理できないからと繊維質の植物も禁止だったので大好きな芋類も御法度だ。心の中でご免ね、と思いながらいつも同じような食膳を用意するしかなかったのだが文句も言わず食べてくれた。

テレビで芋のニュースが流れたときのことだ、「おいしそう」という声がもれたのは。大好きだった甘いものに加えて、蒸かし芋も一緒に納棺してあげた。