復調か

多武峰ひと筋けぶる野焼かな

気温がぐんぐん上がって気持ち悪いくらいである。

おまけに無風に近く、飛鳥吟行には最高の条件。
野を燒く煙が這い上って多武峰をかきくもらせる。
あらためて飛鳥野を見渡せばかしこに畦焼く煙も立ちのぼって、霞のようである。
春田のずっと先にはたおやかな耳成山がいっそう柔らかく見える。
足もとには早くもイヌフグリが咲き始め、草萌えの春田も起こしてもらうのを待つかのようである。
気分もよくして、望外の出来。ここ二、三カ月の絶不調も上向くかどうか。

登大路の異変

お湿りの火勢上がらぬ野焼かな

今頃はどこから見ても黒い山なのだが。

今年は枯芝色ばかりが目立って、すぐ近くまで行かないと燃やそうとした形跡すら見えない。
若草山の山焼きのことである。
登大路を東大寺めざして歩けば、否が応でも見えるはずの「末黒野」が見えないのは寂しいものだ。
今年は、下り坂の空模様のなか、花火などはあえて強行したようだが、やはり山焼きの火勢上がらず、斑模様ともならずに大半が焼け残ってしまったようだ。
日をあらためて焼くという広報だったから、ある日気がついたらお山が黒くなっているということになるのだろう。