新薬師寺

神将のおはす本堂飾りかな


十二神将像で知られる新薬師寺へ。
本尊の薬師さまを加えるとそれだけで国宝13体。豪勢なことである。


干支の守護神前で。

門前には十市皇女を祀った比賣神社と歌碑があった。

河の上の ゆつ岩むらに草むさず 常にもがもな 常をとめにて・・・・・十市皇女(万葉集1-22)


皇女は天武と額田王の娘。大友皇子に嫁いだわけだが、壬申の乱は婿と父との戦であった。

実は今日の目的は隣にある奈良市立写真美術館であった。
知人から、昵懇にしておられる仏像切り絵作家Nさんの個展があることを紹介されたからだ。
昨年秋に倒れ現在リハビリ中という、昨日届いた知人からのメールには大変驚いたが、パソコンに入力するだけで大変な労力を要するといいながら送ってくれたメールからは、電車に乗れるようになったらいつものように必ず奈良に行くとの強い意志をくみ取ることができた。
Nさんにそのことを伝えるために訪問したわけだが、作品をみて驚いた。とても十年前に始めたとは思えない緻密なワークなのである。グレーがないので黒地とそれを切り取ってできる白だけで表現する世界。とくに指の微妙な影と光が印象的だった。
下絵は描くものの、どこを削るかが悩ましいというお話しを伺ったときには、俳句とまったく同じ世界だと思った。
溢れる思いや言葉をいかに濯ぎ削ぎ落とすか。短詩系の醍醐味でもあるが、めったに味わえないものでもある。