卵焼きできそう

鮎刺の砂利に紛れる卵かな

いわゆるコアジサシである。

川や海の近くで子育てをする。
ある年、海の埋め立て工事が完了し、あとは造成地に砂利を載せ地盤を落ち着かせるばかりとなっていたら、野鳥の会から緊急要請があり、子育てが終わるまで工事を控えてほしいと。
もともと豊かな漁場を埋め立てたものだから、コアジサシの好物の小魚も簡単に手に入れる造成地は格好の営巣地だったのだろう。ただ、驚いたことに、現場の飛び立った跡に目をこらすと砂利そっくりの卵があるではないか。巣というものはなく、砂利に直接生んだものだから、親鳥が飛び立てば灼熱の太陽に焼かれる格好になり、そのまま卵焼きができてしまうのではないかと心配するくらいだ。
子育てが終って南に帰れば工事再開だが、巣立った子たちが翌年再び戻ってきても故郷はもうない。