遠い旅

終生の地は山国よ鳥曇に

どの山も薄けぶっている。

PM2.5とも杉花粉とも、その両方ともだろうが、なんとも無粋な空である。
花粉症としては庭仕事にもマスク欠かせずこれもまた煩わしいことである。
空から大和川に目を転ずれば、いくらか鳥の数が少なくなっている。
盆地にかかるここ数日の薄曇りにまぎれて遠い旅が始まったのであろう。

大和の薬売り

草の名をまた習ひけり鳥曇

高取町は昔から薬の町である。

7世紀初め推古天皇がこのあたりで薬狩りを行ったというから、昔から薬草などが豊富な土地だったのだろう。その後も修験者によって「大和売薬」が各地に広がり、江戸時代には置薬として行商が始まったというほど隆盛を誇った。
今でも町には10社あまりの製薬会社があるし、昔ながらの店構えで漢方薬を扱う店があったりする。
何よりも、土佐街道にはゲンノショウコ、ドクダミなどいろいろな薬草の絵を焼いたタイルが10メートルおきくらいに敷設されているので、町に一歩足を踏み入れた途端ここは薬の町だということが知れるのだった。