影ひとつ仕立て直しの夜なべ妣
母は若いころ裁縫をやっていた。
ひとさまの反物をあずかったり、洗い張り、仕立て直しの仕事で夜遅くまで起きていることもしばしば。庭には洗い張りの布がよく干してあったものだ。
あの布を竹ひごでぴんと張るものを何というものか知らないが、実はあれとそっくりの天日干しで最高の干物が出来上がるものがある。うつぼ。そう、海のギャングのあれである。肉厚で約1センチ、腹を割いて干すのだが、干すとちりちりとまるまってしまうため竹ひごを何本も渡して干すのである。ざっと干したのを軽く炙ってくうとこれぞ絶品。干物の王様中の王様である。
産地でないとなかなか手に入らない貴重なものだが、友人の志摩にある親類の家で一度だけいただいたことがある。
もう一度食べてみたいものだ。
確か「シンシ張り」といったような気がします。
私も時々見たことがありますがなるほどあの竹ひごは干物を干すのに適しているかもね。
ウツボの干物というのはどんなものかは知りませんが貴重なものなのでしょうね。
「籡張または伸子張」と書いて竹ひごの両端に小さな針をもたせたもの。ちゃんとした名前を持っていたのですね。
うつぼはほとんど漁師しか食べないので、海辺の民宿とか情報集めて入手したいもの。三浦の磯遊びの蛸網体験で網に入っていたうつぼを、何でもないように漁師が持ち帰ったのを覚えています。同じ篭の囚われものなのに篭の蛸を襲っていたのが可笑しくて。