子に持たす雑巾かがる夜なべかな
アイロンの炭の火おこす夜なべかな
今日のZOOM句会の兼題である。
24時間都市の出現など現代においてはほとんど死語に近くなった感があるが、同じく秋の季題「夜業」との使い分けとなるとなかなか難しいものがある。
「夜業」は組織としての本業あるいはその延長としての夜勤であろうが、秋の趣をどう醸し出すか。これもまたはなはだ難しい。
いっぽう夜なべは個人的あるいは家庭的な都合で行う夜仕事であり、これには秋の夜長、日短という背景を考える必要があるだろう。お百姓さんなら採り入れの季節で夜も惜しんでやらなければならないことも多かったはずである。
農業に関係ない家に育った私は夜なべというと母の内職を思い出す。洗い張りした布を仕立て直すわずかな銭を稼ぎながら育ててくれたのだが、その無理がたたって長く病に苦しんだ。実母散、中将湯など漢方薬を煮出すのを手伝ったことなどを思い出す。
どう考えても古い時代のことばかりを思い出す季題である。