種子を採る

石女と陰に言われて花たばこ
子をなせぬ嫁返されて花たばこ

いまや煙草栽培農家もずいぶん減ったことだろう。

煙草の喫煙の習慣が世界中に広まったのは意外に新しく、大昔からインディオたちによって喫煙されていたものが15世紀末に新世界に伝わって以降のことである。
最近では喫煙する当の本人はもとより、副流煙が周りの者にも害をもたらすというという理由もあって消費が落ちて生産者の数も随分少なくなったことだろう。

観賞用に改良されたものも出回っているそうだが、歳時記などを読むと「煙草の花」とはそういうものではない。作例としては、

見えて来し開拓村や花たばこ 室生礪川

など山村の景を詠んだものが多いが、何もかも管理化される現代、小規模な栽培農家が存続するのは困難で今ではもう見られなくなった景色かもしれない。

煙草の花とは本来種子を取るために咲かせるものだから、通常は芽のうちに摘み取られてしまう。子をなせなくて肩身の狭い日々を過ごしている人には辛い花かもしれない。

“種子を採る” への2件の返信

  1. タバコってどんな植物か全く知りませんでした。ネットで勉強させてもらいました。きれいな花ですね。九州なんかへ行けば野原にも自生しているんですかね。

    1. 栃木の茂木あたりは昔専売局があって煙草栽培が盛んだったようです。背丈を超える煙草がずらっと並んだ光景を思い出します。そこから日立に向かう那珂川沿いは、落ち鮎をとる簗もあってなかなかいいドライブコースですよ。
      JTもすっかり多角化が進んで煙草のイメージがずいぶん薄れましたが、今でも細々と続けておられる農家があるかもしれません。

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